テニス部員よ健康であれ






氷帝テニス部、部長である跡部 景吾はレギュラーとの練習試合をして少し休んでいた。



「跡部部長。お疲れ様。トロピカルジュースでも飲んで休むがよい」

そう言ってやってきたのは

ここ最近、氷帝男テニのマネージャーになった

手に持っているのはトロピカルジュースだ。

「お前にしちゃ、気が利くじゃねーか。

跡部はが持っているトロピカルジュースを受け取ろうと手を伸ばす。

が、途中で受け取るのを止めた。

なぜならそのトロピカルジュースの色は麦茶色だったからだ。

しかし、匂いはトロピカルな匂いが漂っている。



「・・・おい、これは一体どういう飲み物だ?」

ていうか、コレ飲めるのか?

という疑問も抱いてに質問する跡部。

「普通のトロピカルジュース」

あくまで、普通といいのける。

「この色が普通か!?」

「・・・・・・普通だ」

「ほ〜う・・・ならコレを飲んでみろ」

「っ・・・・・」

跡部の言葉に息詰まる

「飲めないんだな」

跡部はなんだか勝ち誇ったような顔をして言った。


「・・・別にオレじゃなくてもいいだろ。岳人!」

「何だよー

岳人が現れた。

「岳人、これはオレが250円出したトロピカルジュースだ。心して飲め」

、なんでトロピカルジュースなのにお〜いお茶のペットボトルに入ってるんだよ」

お〜いお茶のペットボトルに入っているため中身のトロピカルジュースの色が判断しにくくなっている。

「あまり深く追求するでない。グラスが跡部専用のしかなかったからペットボトルで我慢しろ」


このの発言で跡部は実感した。

このグラスに入っている液体はあのペットボトルに入っているやつをグラスに注いだものなのだと。

しかも、は跡部専用のグラス、と言っていた・・・

ということはは無理矢理にでも跡部にこの液体を飲ませようとするんではないか・・・・と。


そこまで考えにいたった跡部は顔色が少しばかり悪くなったような気がする。

「運動して喉が渇いただろう」

ズイッっとペットボトルを岳人に突き出す。

「じゃあ、遠慮なくいただくぜ」

は岳人をうまく誘導し、トロピカルジュースを岳人に飲ませてしまった。



ゴクゴクゴク・・・・・・



「うっ・・・げえ!!!」

岳人はトロピカルジュースを二口三口、口に含み、短く叫びその場に四つんばいになってしまった。

「・・・・・ほれ、次は跡部の番だぞ」

「ちょっ・・・!一体、このトロピカルジュースに何入れやがった!!」

「何も人間の害になるようなものは入ってないが?」

「だったらなんで岳人のやつが倒れたんだよ」

「たぶんそれは岳人が好き嫌いが激しいからだろう」

「なんだそれ!?」

「しょうがないな・・・侑士!宍戸!チョタロウ!ピヨシ!ウス!ちょっとこっち来い!」

「ちょっとまて。なんでジローのやつは呼ばない?」

「実験済み」

親指グッ!をして言ったを見ながら跡部はもうトロピカルジュースを飲む覚悟を決めかけていた。



「なんや、レギュラー呼び出して」

「 うむ。実は皆に飲んでもらいたいものがあるのだが」

はトロピカルジュースが入っているペットボトルを取り出した。

「!先輩、後ろにいるのって…」

日吉がめざとく岳人を見つけた。

「ん?後ろ?」


は後ろを向いた。

そこには先程にトロピカルジュースを飲まされ跡部が座っていたベンチの下に

押しやった岳人がベンチから手をだしていた。

これはマズイと瞬時に判断したは岳人の手をさりげなく蹴り飛ばし

さも何事もなかったかのように前を向いた。


「何もいないが?ピヨシ最近疲れてるんだろう。そんなときはコレを飲むが良い」

そういってズズイとトロピカルジュースを差し出す。

「なんですか?コレ」

「普通のトロピカルジュースだ。味は飲んでからのお楽しみ」

微妙にの言葉には矛盾があるのを皆さんはお分かりだろうか?

「?」

の発言に少しも疑念を抱かなかった日吉はペットボトルを受け取り飲んでしまった。

跡部だけが神妙な顔つきで日吉の行く末を見守っている。



ゴクゴクゴク・・・



「・・・!なんなんですか!?コレ!」

トロピカルジュースを飲んだ日吉の声が少しばかり裏返っている。

「だから、トロピカルジュースだって言っておろうに」

「ちょお、貸してみー」

ヒョイと日吉が持っていたペットボトルを取って忍足がトロピカルジュースに挑戦しだした。



ゴクゴクゴク・・・



「何やコレ。なかなかいけるやん」

プハーと親父臭く息を吐き出す忍足。

日吉と忍足の反応を見て困惑の顔を浮かべていたのはただ一人。

もちろん跡部だ。


「どうなってんだ・・・・・・」

「あの二人は好き嫌いが激しくないからだろう」

跡部の呟きには答えた。

しかし、その答えはあまり参考にならない。



「次は誰が飲む?」

忍足が宍戸達の方に向いて言った。

「俺が飲む」

トロピカルジュースに戦いを申し出たのは宍戸だった。

「レッツチャレンジ」

の言葉で宍戸はトロピカルジュースを飲みだした。



ゴクゴクゴク・・・



「〜〜〜・・・・!!!!ぶほっ!ごほっ!!」

戦いを申し出たはいいがあっさり敗北してしまった宍戸であった。

「し、宍戸さん!!

間髪いれず鳳が宍戸に駆け寄る。

そして、トロピカルジュースが入っているペットボトルを見て

「くそぅ!宍戸さんの仇!

と言って、宍戸の手からペットボトルをもぎ取り飲んでしまった。

どの変が仇なのかはわからないが・・・



ゴクゴクゴク・・・



「・・・・・・」

飲んだはいいが、体が拒絶反応を起こしたのか

口から先ほど飲んだトロピカルジュースを吐き出してしまった鳳。

はっきり言って汚い。


「くっ・・・無念・・・・・・」

そう言って宍戸の上に倒れてしまった鳳。

下敷きにされてしまった宍戸はいい迷惑だ。

この二人の反応を見て、一体俺らは何を飲まされたんだろう・・・と

改めて思う忍足と日吉であった。

は鳳が持っていたペットボトルを回収すると樺地の方に向いた。



「ウス。飲んでみるか?」

樺地は一瞬たじろいだが覚悟を決めたのかウス、と言って飲みだした。



ゴクゴクゴク・・・



「う・・・ウス・・・・」

樺地はジュースを一口二口飲むと方ひざを地面につけてしまった。

「ウス・・・実はお前好き嫌い激しいな・・・?」

「ウス・・・」

樺地は力なく頷く。

これはこれで新事実発覚である。





「さぁて、残る一人は跡部部長、ただ一人だ」

跡部は来た!という顔をしている。

「なんや跡部。まだ飲んでなかったんかいな」

「部長として、飲まなきゃだよなぁ・・・?跡部」

ベンチの下から岳人が顔を覗かせて言っている。

その様は異様に怖い。

七不思議にでも出来そうな勢いである。

そんな岳人を見ている間にも

はトロピカルジュースを注いだ跡部専用のグラスを持って跡部に近づいている。

「飲むぞよ。飲むぞよ」

さあ、さあ、さあ。

跡部は意を決したのかからグラスをひったくった。

「っ・・・!飲めばいいんだろう!飲めば!」



ゴクゴクゴク・・・



その飲みっぷりは漢らしかった。





「・・・なんだ、結構いけるじゃねーか。くせになりそうだぜ」


意外と平気だったため跡部自身、少し驚いていた。

そんな跡部を見てつまんなさそうな顔をしているのはだった。

「チッ・・・つまらん」

そんなの小言を耳ざとく聞きつけてしまったのはまたしても日吉だった・・・



「で・・・結局、トロピカルジュースに何を入れたんですか?先輩」

トロピカルジュースの毒気にやられていた鳳が復活し、に聞いてきた。

この質問は誰もが聞きたいことだった。


「まぁ、ここいらでネタばらしでもいいだろう」

皆は唾を飲み込み、の言葉を待った。





「実はこのジュースにはノニが入っている」

「はぁ!?ノミ!!?」

「ノニだ宍戸。さすがにオレでもノミは入れない」

「で、ノニってなんだ?」

「美容と健康にいい、健康食品だ」

ちなみに、ノニの原液はこれ。

と言ってポケットから取り出したのはゼリーみたいな容器に入った黒い液体だった。


「良薬は口に苦し、というだろう。ノニはさまざまな成分が入っている。それゆえに健康食品としてちまたでは騒がれている代物だ」

「ちゅーか、なんでそんなもんを俺らに飲ませたん?」


面白半分でやってみた、と言われればそれまでなのだが・・・

に限って理由なくして実行を移したとはとうてい考えられないのだ。





「いつまでもお前らには健康でいて欲しいというオレの気遣いのつもりだったんだが」


これはのちょっとした気遣いだったのだ。

スポーツは健康でなくては出来ない。

はテニス部員のことを思ってノニを提供していたのだった。


先ほどのの言葉を聞き、照れくさくて頬をかく者も多く見受けられた。

そんな彼らを跡部は練習に戻らした。





皆を練習に戻した跡部にはそっと呟いた。

「監督にもコレを飲ましたんだが、なかなか好評だったぞ」

の顔を見てみるとその顔は面白いものを見た、と言わんばかりに笑みを保っていた。



「監督もなかなか好き嫌いが激しいとみえる」


その見方はどうなんだか・・・

と思いながら監督が顔をしかめている姿を想像し含み笑いをしてしまった跡部であった。












***あとがき***

なんか最近、文を描けなくなってきています。

どうしてでしょう・・・?

うぅん・・・未だにスランプから脱出してないんでしょうかね〜?

2月中には仕上げようと思っていたのに・・・

遅くなって大変申し訳ありませんでした!

神海様に捧げたいと思います。


                       by 天神 魔利