コントロール






俺がテニス部に入ったきっかけは面白そうだったから

一年の時に仮入部をしてそのまま

テニスの面白さにひかれて入部した

一年生は素振りからスタートして

三年が引退した後にやっとボールが打てるようになる

俺は桃城と組んで打ち合った

そのときも俺は…









ポ―ン


ガスッ




「いっ…てぇ!……なぁ、いってぇよ」


鈍い音と共に痛みを訴える口癖が聞こえた


「レ、レッドボール…」

俺はこちらを睨んできた桃城に向かって

ひきつった笑みを向けた

「レッドボールかぁ
じゃあ俺早く一塁…隣のテニスコートに移動しなくちゃな…
っていうかお前がレッドカード、退場だっつうの、

「ゴメンって」

「一年の時もこんな感じで
俺の頭にボールをぶつけてくれたよな
お前いい加減コントロールっていうものを
身につけろよな、身につけろよ」

「わかってるって
俺にボールをぶつけられたくなかったら早くどっかいけよ」

「お前…全然わかってねぇな、わかってねぇよ…」



桃城は俺に何かを言うのを諦めたのか

溜め息をついてコートから出て行った


桃城が言うように俺はわかっていない

俺は一年前よりは確にテニスの腕は上達はしているのだが

何故だがボールを人に当ててしまうのだ

決して!わざとじゃないんだ

ただ、どうしてか第三者が俺の向かい側にいると

ボールを当ててしまうんだよな

自分のことなのに自分がわからんよ。本当に



「おい!、いくぞ」



荒井がサーブを出そうと合図した

俺は今、荒井と打ち合っている最中だった


「お〜う来い荒やん」


俺がラケットを構えると荒井がサーブを繰り出してきた

俺はサーブを打ち返す体勢に入る

そのとき、ふと

俺の視界の隅に俺の脇を通って

荒井方面に行く手塚部長の姿が目に写った

俺は荒井が放ったサーブを打ち返した



ポ―ン…



あぁよかった

今回は当てずにすんだぞ

ボールは弧を描きながら荒井の方に飛んでいく


ものだとばかし思っていた






ドゴッ!







最初、ボールは荒井のほうに飛んでいたのだが

途中から引力にひかれるかのように

手塚部長の頭に直撃した

もう…コントロールがいいのかよくないのか

ボクよくわかんないよママン…




「て、手塚部長!ヅ、ヅラ大丈夫ですか!?」



あまりの出来事だったので

裏返った声で突拍子のないことを口走ってしまった



「はっ!ヅラ!?」



部長はいきなり地面に蹲ってた顔をばっとあげると

両手で頭を触った




ヅラ疑惑ここにて浮上




「部長!すみませんでした。グラウンド走ってきます!」

「いや、待て、

「はい?」



グラウンドを走ろうと向きを変えた俺は首を捻った


グギッ!


はうっ捻りすぎて首の骨が痛い!



「お前はグラウンドを走るよりも
コントロールを身に付けたほうがいいだろう
荒井と練習を続けてなさい」

「はい父さん」



あぁ!!部長が続けてなさいなんて言うから

思わず父さんっていう単語がぁ!!!



「…父さん?」

「あ、あは、いやぁ…
部長が父さんらしい口調でいうから、つい…」



俺はクキクキと首をただしながら説明した

部長もクキクキと俺の動きに合わせる



「そうか…まぁ確にお前はテニス部でNO.1を
争うほどに手がかかるからな」



えぇ!NO.1って…俺ってそんなに手がかかってたか?

つかその前に俺は誰とNO.1を争ってるんだ!?





「くおらぁ!!
手塚部長になんてことをぉぉぉぉ!!!」





放心状態が解けたのか

荒井がもの凄い形相で俺に迫ってくる


「大丈夫だって、荒井。部長はこのとおりピンピンしてるってば」

「どこがだよ!あの部長が!
お前にグラウンドを走らせないんだぞ!?
どっか変なところに頭をぶつけたに違いない」

「ぶつけられたの、間違いじゃないか?」

俺は冷静に荒井の日本語を訂正してやった

てか、ぶつけたの俺じゃん!<何を今さら…

しかし、微妙に荒井の奴、部長をけなしてんな・・・・・・




確かに、荒井の言うとおり

あれから部長が少し変になったみたいだ



なんか、妙に優しくなってる



ははは。まさかな。

ボールが当たっただけで(当たるとかのレベルではない)

そう簡単に人が変わるわけ・・・





ポーン



ズガンッ!!




「わ、わー!!菊丸先輩、大丈夫ですか――!!?」



しまった!

考え事をしながら打ち合ってたら

今度は菊丸先輩に当ててしまった!!

俺は慌てて菊丸先輩に駆け寄った

すると、いきなりムクッっと立ち上がった

よかった。傷は浅かったみたい・・・・



「こっち来るな!バカ!!」



でもなかったみたいだ・・・

どうやら菊丸先輩は俺がボールをぶつけてしまったせいで





極度の人間不信に陥ってしまったようだ





・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ!まてよ・・・

一番最初にボールをぶつけた桃城はどうなったんだ!?

俺は、バッっと桃城の方に向きを変えた



「なぁ、まさやん。俺のスポーツドリンク知らねぇな、知らねぇよ?」



・・・・・・・・



「あ、これこの前借りてた雑誌、返そうな、返そうよ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・



「あーまだ、にぶつけられた頭が痛てぇな、痛てぇよ」





口癖が激しくなってる!!?



しかも、微妙に無理があるのとかあったし!!






どうしよう・・・俺、テニス止めたほうがいいのかなぁ・・・

俺は再び荒井と打ち合っていた

そのとき、ふと、俺の視界の隅に

荒井の脇を通って俺の方に来る

不二先輩の姿が目に写った



ポーン…



俺は荒井が打ってきたボールを返した

しかし、そのボールは荒井の方には行かなく

またしても不二先輩に吸い寄せられるかのように

ボールは向かっていく

あー…今度は不二先輩が餌食になってしまうのか

と、ぼんやりとその成り行きを見守っていた自分がいた


ボールが不二先輩に当たろうかとしたその瞬間!








不二先輩が開眼しなすった!!!








それと、同時にボールはピタッっと止まり

俺の方へ逆戻りしてきた



「うわぁ!!こっち来たぁ!!!」



俺は持ち前の

逃げる時に発揮される反射神経を使ってボールを避けた



「クスッ君にはなかなか、素質があるね」



不二先輩の声がしたので、俺は勢いよく顔をあげた

しかし、俺の目の前には不二先輩の姿はなかった

俺は急いで後ろを振り返ってみると

コートから出て行く不二先輩の背中が見えた


先輩、素質って何の素質ですか・・・?


俺はそこに来て手塚部長が言っていた言葉を思い出した

もしかして、俺とNO.1を取り合っている人物って・・・

不二先輩なんじゃぁ・・・・・




手塚部長、俺・・・あの人に勝てる気がしません












俺はこの時、決心をしかねた退部を決めた

不二先輩の言っていた、素質っていうのも気になったし

不二先輩に勝てる気がしないし<それは勝たなくていいんじゃぁ?


それに何より、俺、自分が怖い


俺がこのままテニス部に居座ったら何やらかすかわかったもんじゃない

不二先輩、第二号になるのはもっとゴメンだ


俺は普通でいたいんだ!!!


きっと、不二先輩を受け継ぐ人は出てくるさ

そう、例えば・・・あそこにいる赤茶の少年とかさ

あの子からは不二先輩と同種の臭いを感じるね


俺は今日で部を辞めるが・・・・・・・頑張れ、テニス部






、なぁ〜に、今後の未来を見据えたような目をしてるよな、してるよ?」

「桃城・・・これからもめげないでテニス、続けろよ?」

俺は桃城の肩をつかんで潤んだ目で言った

「あ、あぁ・・・」

そんな俺にたじろぐ桃城













さて、さらばだ。テニス部


俺は今日、部長に退部届けをだしに行った









+++あとがき+++

いやぁ・・・ひっさびさに文を書きましたよ!!!

途中まではインフルエンザで

学校を休んでた時なんかに携帯で打ちましたが。

ちなみに、実話入っております。

学校の体育のテニスの時に

人にボールを当ててしまいました・・・


この夢、何気に、双子夢とひっかけております。

わかりましたかね?


主人公、なんだか事前に危険を察知して

いろいろと問題を残して退部しちゃうお話しでした。