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ルンタッタ♪ルンタッタ♪

今日はバレンタイン

昨日はちょっと頑張って手作りチョコを作ってきたんだ

昨日は大戦争だったなーキッチン。未だに片付けてないし…

あっ!申し遅れました。皆さんコンニチハ。 でーすv

今日はある人物にバレンタインデープレゼントをあげようかと思ってるんだー

そんじゃまぁ、教室へ入ろうかね



ガラッ












恐怖











教室のドアを開けたら、俺の席がチョコで埋まっていた

なんだろう、このデジャブ

そっか!アメリカでも同じようなことがあったんだっけ…懐かしいなー



「すごいな、このチョコの量」



扉の前でボーっと突っ立ってた俺に黒が話しかけてきた



「黒おはよー」

「はよ」

「そうだ、このチョコあげよっか?俺、こんなにいらないし」



文字通り、山のようなチョコを指差して言う俺

いくら甘い物好きとはいえ、こんなに大量のチョコを食べたらニキビ一杯できて豚さんになっちゃうしなー



「いや、いらない」

「えっ!なんで!?」

「もうすでに、2個もらってるから」



…黒って結構モテるんだな



「そっかーじゃあこのチョコ誰にあげよう」

「直樹にでもあげればいいじゃん」

「そっか。アイツ、モテなさそうだもんな」



そーしようっと

俺は一人でうんうん頷いてとりあえず、自分の席の近くに荷物を置くと

俺が作ったチョコを持って翼のところへ行った



「つーばーさー!」



翼を見つけたら一目散に駆け寄って、チョコを渡す

翼はシゲシゲとラッピングされたチョコを見て俺に問うた



「何、コレ」

「逆バレンタインなんてものをやってみたかったりー不器っちょな俺が精魂こめて作ったんだぞ」

「へー普段料理もしないがここまでするということは、このチョコに何か入ってたりして」

「アハハハーまっさかー」



…な、何でバレたんだ!?



「でもねー僕、もうすでに大量のチョコがあるからのはいらないんだよね」



拒否っ!!?

酷いっ翼!

なんて、悲劇のヒロインっぽく、ショックな顔をして床に倒れて顔背けて泣いてるふりをしてみた

心なしか、スポットライトが当たっているような気がする

まぁさ、言われて見れば、翼の机にはチョコがどっさりと山のよーに積まれている

翼もモテるからなー

そんなことを思っていると、いきなり地鳴りが響いてきた







ズドドドドドドドドドドドドドド…







地鳴りと共に、女子の声が聞こえてくる



「翼くーんv」

くーんv」




俺と翼は女子の波に飲まれ、おしくらまんじゅう、よろしくギュウギュウにされてしまった

まるで、ラッシュ時の電車の中のよう…

数分経ってからやっと女子の大群は去っていった

俺と翼はもうボロボロだ

新鮮な空気を吸っていると、今度は女子の地鳴りのせいで山積みになっていたチョコが雪崩を起こした

俺と翼は廊下にいたからあの雪崩に巻き込まれなかったけど、黒は大丈夫かなー?

チョコの生き埋めにあってたりして

うん。でも困ったな

翼が俺のチョコを貰ってくれないんじゃ、誰に渡せばいいんだろう?

もしくは、誰にこのチョコを消費して貰おうか…



「って…あれ?あれれぇー?」



さっきまで手に持っていた俺の手作りチョコがなくなっている!

きっと、さっきの女子の群れが来た時になくしたのかも

…ということはこの眼下に広がるチョコの海の中に俺のチョコが紛れ込んでいるのかもってことか……


「どうしたんだ?

「翼〜聞いてくれよー俺の…俺の手作りチョコがないんだ!!」




「何ぃっ!!!!?」





と、俺が叫んだと同時に俺と翼の話しが聞こえた男子数名が叫んだ

そして、女子達が残していった大量のチョコと翼の机の上にあった雪崩チョコの海へと飛び込んで行った

まるで、海猿のように勇ましい男子達

でも、お前等、俺のチョコの包み紙知ってるのか?



「あ、それ」



とある男子生徒が手に持ったチョコを見て思わず俺は声を出した

あの包み紙はまさしく俺のチョコだ

俺はチョコを返してくれるのかと思いその男子に手を伸ばした

が、野郎は俺のチョコを何故か大事そうに抱えて走り去って行ってしまった

その後を数人の男子が追いかける

…まぁ、まだ俺の手作りチョコ、一個残ってるから別にいっか








「ぐおぉぉ〜〜〜〜〜〜〜」








それから数秒経つと、奇妙な叫び声が校内に響き渡った



「何だ?今の叫び声は」

「さあ?翼、行ってみる?」



というわけで、声のあった方へ行くと、俺のチョコを持ってた奴が倒れていた

…誰に殺られたんだろうか



「…今更だけど、のチョコ、貰わなくてよかった」



ボソリと、小声でそんなことを言う翼



「おっかしいなーそんなに変なものは入れてないはずだけど…」

「よし。原因究明をしよう」

「へ?」

「今日の放課後、お前ん家に行くから」

「うん…別にいいけどさ。何、すんの?」

「だから、原因究明」



翼は意地悪っぽくニヤリと笑うと教室へ向かって行った

そろそろ、SHRが始まる時間だしな






―…放課後、宣言通り、翼は俺の家に来ている

何故か、翼だけでなく黒や直樹、五助と六助のいつものサッカー部メンバーが揃っているけど



「うわっ何コレ!?」

「地獄絵図だな」

「何やったらこうなるん」

「・・・・・・コメントのしようがないな・・・」

「まずは掃除だな」



五者五様のコメントを述べる翼と黒と直樹を六助、五助

うん。自分から見てもすごい有様だからなキッチン

自分でも何をどうやったらここまで破壊できるのか不思議に思うよ



「よし。一通り綺麗になったな!」

「何が悲しくて人ん家の台所を掃除しなきゃならないんだよ…」



翼がはぁと溜息をついた

六助、五助兄弟を中心にキッチンは綺麗に掃除された

うむうむ。ミラクルだな。ここまでキッチンを復元できたのは

これでやっと原因究明が出来る



「それじゃあ。お前が作ったチョコを今ここで作れ。僕達はここで見てるから」



昨日のチョコ作りを再現してみろと



「そういうことなら、おまかせあれ!」



俺は本を広げて道具を用意して作る準備をした

えーと、まずは砂糖だったな

砂糖50g…と



「おい。それ塩だぞ」

「え!?そーなの?」



黒にダメだしされて、俺は砂糖だと思っていたものを指ですくって舐めてみた

…しょっぱい



「分量を間違える以前の問題だな…」

「でも典型的な間違え方やなー」



翼と直樹が俺の間違いにコメントを入れる



「へーこのチョコってお酒いれるんだ」



五助が本の材料や作り方に目を通して、そんなことを言った

五助の独り言とも言えるその呟きに俺は砂糖を取り出しながら言った



「うん。そーだよ」



俺の言葉に五人は一塊になってごしょごしょと口論を交え始めた



「洋酒じゃなくて日本酒をいれたのかも…」

「いや、わからんで。のことだから、もっと豪いもんを入れたのかもしれんし…」

「もしかしたら酒以外のものを入れたとか…」

「それ、ありえそうで怖いぞ柾輝」

「うぅ。なんか胃が痛くなってきた」



そこまで話しあっていると、翼が俺に話しかけてきた

ちなみに今はチョコを溶かしてその中に砂糖を入れている段階



「なぁ。なんのお酒を入れたんだ?」

「んーと…」



俺はしばし記憶を探ってから答えを出した



「ビールだったかな」




「「「「「ビール!!?」」」」」



そう。俺の家にはお酒がなかったからビールにしたんだよなー

お酒がないっていうのは語弊があるから、開けられたお酒がなかったって言えばいいのかなー



「結構前に買ってあったやつがまだ残っててさ。もったいないから使っちゃった」



俺は翼に昨日使ったビールと同じものを冷蔵庫から出して手渡した



「しかもコレ、賞味期限切れてるじゃん!!」



翼はビールを見つめると突然ビールを床に投げつけて叫んだ

ビールがひしゃげて中身が出てる

五助が慌てて台布巾でビールを拭いている



「やっぱマズかったのかなー」

「さすがに賞味期限切れのビールはマズいだろう」



ビシッとツッコミを入れる黒




「ま、これで原因がわかったから。これでもう、殺人的な不味さにはならないよ」

「そうだね。基本的にチョコなんて、市販のチョコを溶かして型に入れて固めるだけだし」



翼の言うとおり、溶かして固めるだけなんだよね

溶かして固めるだけ

溶かして固める…だけ…

溶かして固めるだけ……なのに…





グピグピ…グピピグピ…





「何でこうなるんだ……」

「そんなの俺が一番知りたいよ翼」

「うぇ。なんかグピグピ言ってる

「ゲッ、生きてんのコレ!?」

「こんなん、よう食えたなー俺だったら即生ゴミ行きにするわ」

「うわぁっ!!なんか目が合った!!??

「しっかりするんや六助!錯乱したらあかん!!」



今、俺達の目の前に置かれているのは先ほど溶かしたチョコを冷蔵庫で固めたもの

そう。チョコだ

チョコのはずなのに…

なぜか、チョコの表面には顔みたいなのが浮き出ていて

しかも鳴き声…黒が言ったように、グピグピと鳴いている


うーん。ホラーだ

ホラーの何者以外でもないくらいにホラーだ

こんなの小さい子供が見たらショックでバレンタインの行事を嫌いになってしまうな



「んーでも、昨日はこんなチョコにはならなかったんだけどなー…」



昨日は普通なチョコだった

…まぁ味はともかくとして、形は普通だったんだよなー

それが、味がまともになった途端に形が普通じゃなくなるなんて…

世の中不思議なことが起こるものだ



「…コイツは先天的毒料理マスターだな」

「まさか、身近にポイズンクッキングを作れる奴がいたとは…」



この日から俺は料理を強制的に封印された







◆◇◆あとがき◆◇◆

中学校時代に書きとめていた小説を書いてみました。

いや、だってバレンタインが近いのですし。

本当はもっと長かったんですが、短くしました。

本当は東京選抜メンバーも巻き込んだお話だったのですが、さすがに長くなるので飛葉中だけにとどめておきました。

最後らへん、ヒットマン用語が入ってますが気づかれた方いますでしょうか…

ヒットマン、結構好きです。



2006.1.21



「黒、お前ディフェンス上手いなー」



に抜かされた瞬間のことを思い出していた柾輝は

の言葉によって我に帰り、こちら側に戻ってきた。

「そっちこそ。お前がそんなにサッカーが上手いとは思わなかった」

「え!?何!?俺ってそんなに運動音痴に見えるの!?」

「いや、見た目的にスポーツはやらなさそうな感じが・・・」

「人ヲ見カケデ判断シチャダメネー」


「「・・・・・・」」



二人は顔を見合わせると同時に笑い出した。



このとき、二人の間には友情という名の花が咲いた。

のお友達一号の出来上がりである。






――――・・・昼休み


4時間目の授業が終わると翼からメールが届いた。


柾輝のクラスに茶系色の髪をした奴いるだろ
ソイツ、ちょっと昼食に招待してくんない?


という内容だった。

頼んでいるように見えるが、これは強制的・・・

いや、命令に近いものだった。

柾輝は小さく溜息をすると、隣にいるに話しかけた。



「なぁ、。これから紹介したい奴がいるんだけど」

「ん?何?黒の友達?」

「・・・まぁ、そんなようなものかな」



柾輝はまだ自分がサッカー部に入ってる

とはに教えていなかった。

まぁ、聞かれもしなかったから答えなかった。

という方が適切だと思うが・・・


かくして柾輝はを屋上へと連れ出したのである。




「おっ、来たな。柾輝」

「あぁ。約束どおり連れてきたぜ」



すると、柾輝の背後からひょっこりと顔を覗かし



「どぉも〜黒の友達の で〜す」



と、とても愛想のいい笑みを浮かべて自己紹介をした

このの笑顔光線にあたった男子'sはノックアウトされてしまった。



「?話しが違くない柾輝。だれが女子連れて来いって言った?」

「何言ってんだ、翼。コイツは・・・」



柾輝が続きを言おうとしたがが柾輝の顔の前に

手を当てたために続きがいえなかった。

その間にが笑みを作って喋った。

それはもう楽しそうに。



「ちなみに、2-2組に転入してきた
 かわいい謎の男子生徒とは、俺のことで〜〜〜すv」



語尾にハートがつきそうないきおいで(いや、もうついてるが)語った



「「「えええぇぇ!!?男!!!??!」」」



皆して声をそろえて叫んだ。



「柾輝!お前一言も男だなんて言ってないじゃないか!」



五助が吼える。



「俺は一言も女が来たなんて言ってないぞ」



どうやら、柾輝の情報提供不十分のせいで勘違いをしていたらしい。






「じゃあ、要するに柾輝が言ってた変な転入生と僕達が連れて
 来いって言って柾輝が連れてきたコイツは同一人物だと」



一通りに自己紹介もし終わってから

自分達の認識の間違いに翼がまとめあげた。



「まぁ、そういうことになるな」

「どこで情報が間違っちゃったんだろうね〜?」

「柾輝が転入生のことを“かわいい系”なんて言うからや」

「ん〜でも俺かわいいし?しょうがないんじゃん」


「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」


「んで、なんで俺をここに呼び出したんだよ
 もしかして集団リンチってやつ?ヤキいれたろか〜って」

「ヤキいれたろか・・・っていつの話だよ」



の言葉に呆れる柾輝。



にはまだ言ってなかったけど実は俺サッカー部なんだよ」

「あぁ。確かにここにいる人皆それっぽいや」



と言って皆を改めて見渡す。



「ということは、もしかして俺を勧誘にしにここまで連れてきたってわけ?」

「そういうこと。二時限目の体育の時間ののプレーを見せてもらったよ。どう?入らない?」

「え〜ヤダ!」



の答えは非常にさっぱりしたものだった。



「サッカー部に入りたくない理由10個以上言ってもらおうか。言えなかったら入部決定ね」

「っ・・・・!」



翼のあまりにも横暴な言動に息を詰まらせる



「え〜・・・と・・・まずはー汗臭い!汗かくの嫌い!動きたくない!男臭い!花がない!」



一方、が断る理由を一生懸命考えている後ろでは

直樹と畑兄弟がお菓子を広げていた。

の勧誘は翼と柾輝に任せて

俺達はおやつタイムにしようぜ、といった感じだ。



「ん〜と・・・それからーそれからー部活をやると見たいテレビが見られない!ヤッター10個言えたぞー!」

「もうちょっとまともな返答がほしかったんだけどなぁ・・・」



ちょっとひきつった笑みを浮かべてに詰め寄る翼。



「まともな理由って言ってないじゃん。約束どおりサッカー部の入部はナシね」



はプイと顔を翼からそらした。

そらした先には直樹達がお菓子をいろいろ広げて

食べている光景があった。

はそのまま直樹達のほうに直進した。

翼の声を無視して。



「うわー!それ最近でたばっかのお菓子じゃん!」



目をキラキラさせて言う

どうやらお菓子には目がないらしい。

その様子を見ていた翼が怪しい笑みを浮かべた。



「僕のこのゼリー食べる?」

「えっ!ええの!?」

「お前には言ってないよ直樹」



ピシャリと言い放つ翼であった。



「食べていいの!?」

「うん。その代わりサッカー部に入ってよ。そしたらあげる」



は大いに悩んだ。

今ここで幻のゼリーを食べて

サッカー部に入るか、食べないでサッカー部に入らないか・・・

しかし、の中ではもう答えは決まっていた。



「欲しい!サッカー部入るからそれちょうだい!」



のこの返答を聞いて翼はニヤリと笑みを作った。

翼はこの時からの取り扱いの方法を覚えたのだった。








◆◇◆ あとがき ◆◇◆

あわーやっと第二話書けました〜

やはり下書きがないとつらいですね・・・

前々からちょこちょこ書いてたんですけどねぇ

結局何ヶ月もかかってしまった・・・!




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