綾羅錦繍






「皆ー!ハロウィン企画、通ったよ!!」





10月30日

今日はいわゆるハロウィンという日だ

この行事は今年、葵の奴が新しく申請してできたらしい



ピンポーン



俺は日課となりつつある、葵の家のインターホンを鳴らした

君が来てくれたわよ〜」

中からおばさんの声がする。そしてドタドタと慌しい音



バタン



「やっと来たか、さっさと行くぞ」

「やっとって…30秒かそこらじゃんか」

「こちとらお前に着き合わされて4時起きなんだ。早く学校行って寝たいんだよ」


そう言うと俺は欠伸をし、厚い丸メガネを取って目をこすった

ちなみに俺は学校では先生達のホワイトリストにトップで乗っている程の優等生を演じていて

この伊達メガネをかけて素顔を隠している


「別にボクに合わせてくれなくていいのに」

「何かあったら大変だろうが。特にお前は一人にしておくと何やらかすか分かったもんじゃない」


これは本音だ

俺とコイツが初めて会ったときなんか豪い事になっていたからな

それ以来、俺はなるべく登下校を共にしてやっている


「その紙袋はなんだ?」

「これはねー今日のハロウィンパーティのさんの衣装だよ」

「そういえば昨日、夜遅くまで起きてたっけな、お前」

はニコニコと頷く

「これって有志だけだろー俺、興味ないし先に帰る」

「えー!!?せっかく夜なべしてさんの衣装作ったのにー着てくれないのー!?」

「・・・・・・・・・・・はぁ。・・・わかったよ。参加すればいいんだろ」

俺はしばし、間を置いてから了承の意を答えた

「さっすがさん!じゃあボク、今日の放課後に放送室に行くね!」

は俺に紙袋を渡した

「放課後、放送室な」

「うん!」


こうしてハロウィンの朝が過ぎた












夜が更けて、ハロウィン祭を告げる放送をする

祭の開始だ

俺はが作ってくれた衣装を身にまとい放送室の入り口でを待っていた



さーん!」

聞きなれた声に俺は顔を上げる

するとそこには何故か

スリットがやけに目立つ女物の着物を着たの姿がいた



俺は思わずに向かって叫んでいた


「お前っ・・・なんて格好してんだ!?」


「じ、実は・・・かくかく・・・・・・」

「しかじか・・・と。ふ〜ん、成る程・・・・・
ってそんなんでわかるかっ!!!

「わぁーゴメン、ゴメンって!ちゃんと説明をするから〜〜〜」





の説明を聞きながら校内を回っていた

今は人が多くなってきているのではぐれないようにの手を繋いでいる

実際に、手を繋いでいなかったらは人の波に流されてしまっていただろう

これだからコイツから目が離せない


からこの格好のことを聞き出したことをまとめると、のこの姿を見て葵かどうかわかる人がいるかいないか、という賭けをやっているらしい

生徒会はこれでいいのか?

と、思わずツッコミを入れたくなってしまう

それでなんでスリットかというと、会計の通称、姫とか言う奴がの衣装を作ったらスリットが入っていたらしい

一言で片付けると姫って言う奴の
趣味だな

きっと、そうだろう


廊下を歩いているとクッキーを頬張っている放送部のクソ部長を見つけた

クソ部長は俺達には気づいていないらしく、じぃーっとどこかを見つめている

・・・・・・・

なんとなく、その視線を追ってみたらクソ部長の視線の先にはの足があった

どこ見てんだよあのクソ部長


・・・なんとなく感に触ったのでをクソ部長から見えない位置に俺の身体をずらした

すると、クソ部長は一瞬悔しそうな顔をして、もう一度見ようと身体をずらす

その攻防戦が何十回と続いた後、クソ部長はしびれを切らしたのかこっちに近寄ってきた



「そこの君ぃ〜なぁ〜んで邪魔するかねぇー」

「あんたが変な目でコイツを見てるからだろ」

クソ部長は黙りこんでマジマジと俺の顔を見出した

「あれ!?もしかして君!?丸メガネしてなかったから気が付かなかったYO!



なんでラップ口調!?



「いや〜でもメガネを取ると変わるもんだね〜おっとこ前〜」

と、肘でつつくクソ部長

つつくんじゃねぇよ

俺はクソ部長の肘を鬱陶しく手ではたいた

「痛いね、俺の手が傷物になったではないか!」

「ハッ、言ってろ」

「それより、君。この後ろにいる子、もしや副会長じゃないのかね?」

「えっ、よくわかったねー双葉部長ー」

素直に驚く

「ははん、それくらい足を見ればすぐにわかりますよ!」

得意気に言うクソ部長

「足を見ればわかるもんなのか?」

「ん?わかるよー副会長の足は特に美脚だからねっ!透けるように白い肌に細い脚、そして綺麗なライン・・・忘れようにも忘れられないさ!」


脚フェチかYO!!!??


あぁ・・・クソ部長のがうつっちまった・・・・・・・

このクソ部長が脚フェチだいうことがわかったところで俺は再びを後ろに庇った

「あっ!ちょっと、もっとよく見しておくれよ!」

「ヤダ。絶対ヤダ。お前には見せない。絶対に。ほら、こんな奴から離れるぞ」

俺はの腕をぐいっと引っ張った

「えー?もうちょっと双葉部長と話したかったのにぃー」


「あー先輩の声がすると思ったら、やっぱりいたーvv」


声がかかった方に二人して振り向く

「あれー?姫ちゃんじゃーん」

「あっ、先輩ーやっぱ、ばれましたか?」

「うん。今さっき双葉部長に見破られたとこ」

「やっぱりねースリット入れて脚をよく見えるようにして正解だったわ。なんせ先輩、先輩の脚のことばかり褒めるんだもの」

「そんなことないよ姫っち。女の子の中では君の脚が一番綺麗さ!」

脚か。とりあえず脚なんだな。顔とか性格とかは別として

「やだっ。先輩のその声でそんなこと言われたら・・・私・・・私・・・・・・」

「姫っち」

「せんぱぁい」

ヒシッっと抱き合う二人

「え・・・と二人はもしや、付き合ってたりするの?」

が二人に訊ねた

二人は顔を見合ってから同時に言った


「「そうでぇ〜〜す」」


なんつーか・・・

意外だ

こんなクソ部長に彼女がいたなんて。しかも年下

「へ〜双葉部長もやるね〜姫ちゃんは双葉部長のどこが気に入って付き合い始めたの?」

「先輩の声に惚れたのv」



コッチは声フェチ!!!??



「先輩の声って誰よりもかっこいいんだものv」

確かに・・・声だけはかっこいいよな。このクソ部長

なんか、段々と二人の世界に入っていっているようなので早々にこの場から退散させてもらった

この学校、フェチが多いなー・・・








さっきから皆の視線が集まってきているような気がするのは気のせいか…?

「あっ」

突然、が声を上げた

「どうした?」

「クニクニが目の前にいる」

はミイラ男に指をさしながら言った

…あれが、生徒会長の手塚先輩…なのか……?

「ボクちょっとクニクニに悪戯をしてくるね!」

と言って、走って行ってしまった

「Trik or Treat ?お菓子をくれても悪戯するぞv」


うわ!なんつー悪質な…!!

困惑している手塚先輩をよそに包帯の一部をとって、手塚先輩が取れないように結んでしまった

俺は手塚先輩のことが気の毒になり、手塚先輩の前を通る時に同情の目を向け軽くお辞儀をして通った





俺は飲み物を買ってくると言い、をその場に残して自販機へと急いだ

あちこちでピンクの包み紙のキャンディを異性に渡している姿を見かける


ハロウィン祭が開始してから、こんな噂が流れ始めた

『Trik or Treat ?』と言って、好きな人にピンクの包み紙のキャンディを渡し

相手がハート型のお菓子を渡せば両想い、元々カップルの人は永遠に結ばれる、という噂だ

お祭とかになるとこういうジンクスめいた噂が辺りを飛ぶようになるけど・・・

こういうのって一体、誰が流しているんだか・・・



「さぁさぁさぁさぁ!ピンクの包み紙のキャンディとハート型お菓子はいらんかねー

 ピンクの包み紙のキャンディを差し出した愛しの君にハート型お菓子をプレゼントすれば永遠に結ばれること間違いなし!」


「すいません、それ一つください」

「はい、まいどありー」


きっとこういうことしてるから、あぁいう噂が立つんだな



「ギャンブラー、売れてるか?」


ギャンブラー・・・?

あぁ、がよく話してる…書記だけど金のことにがめつい、会計になったほうがよかったんじゃないかと言われているアノ…


「その呼び方止めろって言ってるだろ!・・・売り上げは上々だよ。まさか、ここまで売れるとは思ってもみなかったけど」

「発案者が言うなよ。こうして、俺たちが地道に活動してるおかげでこういった計画が上手くいくんだよなー会長や副会長に感謝されたいくらいだぜ」


なんだか生徒会の黒い部分が見えた気がするな・・・


「しっかし、カップルの数が増えたなーやっぱ、この宣伝効果かなー」

「カップルといえばな、ギャンブラー。写真部と新聞部が手を組んで校内ベストカップルを探してるそうだぞ」

「だぁーかーら!その呼び方止めろって言ってるだろ!」

「ナンバー1ベストカップルには食券のタダ券が貰えるらしいぞ」

「ふーん・・・じゃあこのカップル倍増も、そのタダ券が目当てで?」

「そういうことだろうな」


ふーん・・・写真部がそんなことをねぇ・・・

もしや、さっきからと一緒に居る時に感じたあの視線って・・・・・・

俺はあえて、考えないようにして自動販売機へと急いだ






ジュースを持ってさっきの場所へと戻るとはいなかった

辺りを見回すとテニス部の連中に青い包み紙のキャンディを渡しているの姿を見つけた

ピンクが愛情とかそういう類のジンクスなら青の包み紙は友情とか、願い事の類のジンクスになるんだろう

まぁ、らしっちゃあ、らしいけどな

俺はの気が済むまでここで待っていることにした






ハロウィンの日から5日が過ぎた―・・・


校内掲示板にたくさんの人が集まっている

掲示板に張り出されているものを見てみるとそこには一枚の新聞が張り出されていた

しかも、豪華にカラー版

あぁ・・・あのハルウィン祭の時に、写真部と新聞部が手を組んで・・・って誰かが言ってたな

ベスト5位までベストカップルを載せている



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!」



俺は何となく予想していた事態にも関わらずその記事を見て
噴出しそうになった


ベストカップルNO.1の写真には着物を着たと、和服姿の俺がジュース片手に歩いている姿が映っていたのだから

いつ、こんな写真を撮ったのだろうか

しかも、記事には



“幻の美男美女カップル!?”

“ハロウィンが終わり、学校が始まってから我々、写真部と新聞部は

 必死でこの二人を探しインタビューを試みたが見つからず!

 はたして、これはハロウィンにだけ現れた幻だったのか!?”




と、書かれていた

それは、見つから無いだろう。なんせ、は女ではなくて男なのだから

この記事を見つけたの行動が軽く予測できてしまうな・・・


あ、そういえば学食のタダ券はやっぱ無効になるのか

タダ券欲しかったな










+++あとがき+++

ハロウィン話、書き直しいたしました〜

今回のは全て辿さん視点でお届けしました。

というか、テニスキャラが出てなくてスミマセン・・・
orz