一喜一憂
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「いやぁ〜こんなところでちゃんに会えるなんてラッキー★」
先ほど喫茶店の前で出会ったさんに向かって言う千石先輩
「ボクもスミスミに会えるなんて思ってもみなかったよ。運命感じちゃうね〜」
さんは千石先輩が言っていた通りの人でした
色白で、どこか儚く、顔立ちも綺麗で、そして・・・
「こうして、ダンダンとも知り合えたし!う〜ん・・・これも運命〜」
どこかおかしな人でした
「だ、ダンダン!?何ですか?それ!?・・・それに苦しいですぅ〜〜〜」
「壇 太一だからダンダン。あだ名だよ、あ・だ・名。あーいいなぁ〜こんなにかわいい従兄弟が欲しかったなぁ〜」
さんは僕をギュ〜っと抱きしめています
く、苦しいです・・・
「あはは。弟じゃなくて、従兄弟がほしかったの?ちゃん」
確かに、弟じゃなくて従兄弟を欲しがるなんて・・・やっぱ変わっています
「せ、千石先輩、笑ってないで助けてくださいよ〜〜〜」
僕は必死で千石先輩に助けを求めました
「いいじゃないか壇君。逆に羨ましいよ」
先輩はどこか遠くを見つめて言いました。すると、さんが急にピタッと動かなくなりました
どこか、具合でも悪くなったんでしょうか・・・?
「スミスミ・・・もしかして、妬いてるの?」
僕の心配はよそにポツリとそんなことを言うさん
「わかる?俺もちゃんの愛の抱擁が欲しいんだよ・・・・・・」
「スミスミ・・・」
「ちゃん」
先輩は僕を放し、千石先輩の手を取り、二人して見詰め合ってしまいました
・・・先輩、もうちょっとましな助け方をしてくれたらありがたかったです・・・・・・
せっかく解放されたので僕は大きく深呼吸して酸素をとりいれることにしました
「そういえば、阿久津先輩まだ来ませんねぇ・・・」
時計を見て思わず口に出してしまいました。あれ?さんの顔色がなんだか変わったような・・・
「え・・・と、その、何とかって人、ここに来るの?」
「あぁ、うん。もうすぐ大会が近いのに部活に顔を出さないからさ。阿久っちゃんと仲のいい、俺と壇君が南部長に頼まれたんだよね。説得してくれって」
「それと、栗のこともお願いできるかしら?」
突然、女の人の声がかかってきたので、そちらに振り向いてみると
そこには、ウエイトレス姿の阿久津先輩のお母さん、優紀さんが立っていました
「栗?」
さんは不思議そうな顔をして鸚鵡返しに優紀さんに聞きました
そっか、さんは知らないんでした・・・
この間の持ち物検査のときに阿久津先輩の鞄の中身のことを・・・
「あら、君のお友達の・・・この間はうちのバカ息子が迷惑かけてごめんなさいね」
「あっ!いえいえ!そんな、気にしてませんよ。こっちもそちらの息子さんに手を出してしまったんですから、おあいこですよ」
「え、ちゃんって阿久っちゃんと、会ったことあるの!?」
「あぁ、うん。ちょっとね・・・」
さんが千石先輩の目を逸らしながら答えました
もしかして阿久津先輩、またよからぬことをしでかしたんじゃあ・・・
「で、栗のこともお願いできるかしら?清純君」
「えぇ。いいですよ。優紀ちゃんの頼みならば!」
優紀さんはありがとう、と言うと店の奥に行ってしまいました
そこで改めてさんが栗について質問してきました
「栗って一体、なんのこと?」
「この前、持ち物検査をしたら阿久津先輩の鞄の中から中学生が持ってちゃいけないものがゴロゴロ出てきたんです」
「タバコだとかスタンガンとか」
うわぁ・・・と顔をしかめるさん
「その中に何故か栗が入っていたんです。しかも毬栗が!です」
「毬栗!!?それは痛いよ!危険だよ!!」
スタンガンには反応を示さなかったのに、毬栗には示すんですね・・・・・・
「でも、なんで毬栗なんかを鞄の中に入れてたんだろう?」
「阿久っちゃん、ああ見えてモンブランが好きなんだよ。モンブランって栗じゃん?ということは栗も好きっていうことで・・・」
「おやつ代わりに栗を食べてるみたいなんです。しかもその栗、このお店から、しっけいしてるみたいなんです」
「あぁ・・・だからあの人、栗のことを頼んでたのか」
さんが納得したようなので、僕はコクリと頷いてみせました
さんは時計を見て、椅子から立ち上がりました
「それじゃ、阿久津っていう人が来る前にボクは帰らせてもらおうかな」
「え、もう帰っちゃうんですか?」
「そうだよ。もっと、いなよ」
さんは自分の荷物をせっせと持つと申し訳なさそうに言いました
「う〜ん・・・でも、あんなことがあった後だから、ちょっと顔会わせずらいんだ・・・」
「・・・うん。わかった。じゃあまたね、ちゃん」
さんの気持ちを汲み取ってか、千石先輩が挨拶をしました
「うん。またね、ダンダン。スミスミ。それじゃあ・・・」
僕は先輩に手を振って別れました
おかしな人でしたけど、居なくなると心にポッカリと穴が開いたような、寂しい気持ちになりました・・・
喫茶店を出てから、は急いで家路につこうと走っていた。
「ああ――!!再放送のドラマがはじまってしまう〜〜〜」
は再放送のドラマ見たさに急いでいた。
「・・・ここの裏道を通れば5分は早く行けるはずっ!!」
そう言っては人通りの少ない道に入って行った。
こういう、人通りの少ない道というところには必然的に道徳的によろしくない人達が集まりやすい。
が入った道も例外ではなく・・・・・・・
「おい、こら待て。誰の許しを得てこの道、通ってんだぁ?」
を呼び止めたのはいかにも、ガラが悪く、ヤンキーです、と体中にオーラを撒き散らした人物だった。しかも、頭も悪そうだ。
「ここって、公共の施設だから許しなんかいらないんじゃないの?」
無謀にもはヤーさんに口論する。
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。ここは俺らの場所だぜぇ?だからよぉ、ここを通りたかったら、それなりに支払ってもらわねぇと困るんだよねぇ」
ヘッヘッヘッヘッ・・・と下品な笑いを浮かべるヤーさん達。
「支払いって・・・勝手に私物化してる人達の方がコッチは困りもんだよ」
は呆れたような口調で言い返す。
「それにボク、お金なんて持ってないし・・・・・・じゃ!」
と、元気よく言って踵を返し、もと来た道を戻ろうとする。
が、後ろを向いたとたんに新たなヤーさん達がの進行方向を阻止してしまった。
今、はヤーさん達にサンドイッチされている状態になっている。
「代金は金じゃなくてもいいんだ。アンタの身体で支払ってくれてもな。臓器とか」
「そのまんまの意味でとってくれてもいいぜ。お前さん、綺麗な顔立ちしてるしなぁ」
は冷や汗を流しながら後退する。それに合わせてヤーさん達もじりじりとに迫っていく。下品な笑みを浮かべて。
ヤーさん達がもう少しでの身体に触れそうなときだった。
ズドドドドドドドドドド・・・・・!!!!
「テメェ!しつけぇんだよ!!」
「っるせぇ!そっちこそ、くたばれや!!!」
地響きとともに現れたのは、なんとなんとと阿久津だった。
「なんだ、お前ら!?」
「止まれ!!」
ヤーさん達が二人に静止の言葉を投げるが、つっ走って来る二人には意味をなさなかった。
「ああ?」
「テメェラ邪魔だ!どきやがれ!!」
ドカッ!バキッ!!「うわぁ!」ドカッ!ベシャっ!!バキッ!「た、助け・・・!!」ベキっ!!グシャァ!「ぎゃぁー!!」ガギッ!ドゲシッ!バゴッ!!……
「な・・・一体・・・何が起こったんだ・・・・!?」
残ったヤーさん達が目の前で次々と仲間達がやられていく光景を見て、うろたえていた。
それはさながら地獄絵図のようだった。
そんな中、だけは、自分のピンチを助けてくれた人物に目をキラキラと輝かせていた。
「あ、さん・・・」
一通り、ゴミを片付け終わった阿久津が一番早くの存在に気が付いた。
「貴様・・・!何でこんなとこに!?」
同じくゴミを片付け終わって、ヤーさん達の返り血をぬぐいながらの存在に気づく。
「!?どうしてお前がここにいるんだ?」
「さぁ〜〜〜ん!!さすが!ボクのナイト様だね!!
ピンチになると現れる・・・そう、まるで・・・
空を飛ぶ正義のあんこが詰まったパンのよう・・・・・・」
はに勢いよく抱きつき感激の言葉を並べた。
「俺を空飛ぶアンパンと一緒にするな」
と、痛恨の一撃をにおみまいする。
「で、どうしてコイツがこんなところにいるんだ?」
「どうせ、再放送のドラマ見たさに近道しようとして、こんなところを通ったに違いない」
に言い当てられてしまって、うぐっ・・・!と息を詰まらせる。
「そ、そういうさんはストリートファイトをしてた系?」
「まぁ、そういう系だ」
はそのストリートファイトをしていた相手を見ようと、から離れた。
そして、と死闘をやっていた人物を認識する。
「な、ななななな、なんでこんなところにっ!!?」
「気づくの遅ぇ・・・」
落胆しながら言う阿久津。
見捨てられたヤーさん達は無視されてるのが悔しいのか、ピーピーわめきだした。
「こら!俺らを無視してんじゃねぇ!!」
そんな彼らにむかって阿久津はガンを飛ばした。
「ああ?うっせぇんだよ。栗投げるぞ」
「栗は!!栗だけはぁ!!!!」
何故か、が焦って阿久津を止めようとする。
ヤーさん達を一瞥しながらが言った。
「おい、阿久津。勝負はまたおあずけだ。とりあえずコイツらでうっぷんを晴らそうぜ」
「チッ・・・しょうがねぇ。いっちょ、やるか」
阿久津も了解して、ヤーさん達に向かって走っていった。
そして、地獄絵図再び。
「っと!これでラストォ!!」
バギッ
「ふぅ。終わった。終わった」
返り血と汗を腕で拭きながら言う。阿久津も運動後のタバコなんかを吸っている。
「お疲れ〜いやぁ、いつもながら鮮やかだねぇ」
が労いの言葉を投げてに近寄った。
は、チラッと阿久津の方に向いておずおずと言い出した。
「え、えぇ〜と・・・今宵は助けてくれてありがとう。お礼に今度モンブランを持ってそちらの部活に参上したいと思いまする」
緊張しているのか、変な言葉がの口から飛びだした。
「・・・ケッ」
阿久津は立ち上がり、が来た道を行ってしまった。喫茶店へと向かうのだろう。
「へっ、モンブランって聞いてあいつ浮かれてやんの」
「え?」
の言葉に驚きの声をあげる。
「はーぁ・・・疲れたな。おい、、帰るぞ」
が何か聞きたそうだったのを遮って、は早足にその場を去ろうとした。
は慌ててその背中を追う。
は少し、阿久津と仲良くなれるような気がした。
+++あとがき+++
久々に本編書きましたね〜
いちおう悪魔降臨の続きになるのかな?
主人公、阿久津と仲良しになりそうな回でした。
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