天之暦数






「どうしたんだ?越前。最近、機嫌が悪ぃな、悪ぃよ」



越前リョーマは機嫌があんましよくなかった。

そんなリョーマに面倒見のいい桃城がリョーマに訊ねた。

「最近、校門とかに人がいて、握手を求められるのがうざいんっスよ」

「まぁ、選挙運動だからそれは仕方がねぇよ」

リョーマの答えに苦笑いを浮かべて言う桃城。

「選挙といえば、先輩はどうやって副会長に選ばれたんっスか?」

リョーマが桃城に訊ねる。

すると、いきなり桃城は遠い目をしながら明後日の方向を見つめだした。

「クスッそんなに聞きたいのかい?」

「ふ、不二先輩・・・・・・聞きたいっス」

突然、音もなく背後から現れた不二に驚いたリョーマだったが好奇心が勝って不二にいきさつを話すように頼んだ。

「そうだね・・・最初はね、は副会長に立候補してなかったんだよ」

「え!?」

「本当はね手塚を無理矢理、生徒会長に立候補させて、は手塚の応援者をしたんだ」


不二は昔話をするかのように語りだした。








先生が選挙について説明をしてから、誰か立候補する人はいないかって手塚の方を見ながら言ったんだ




「不二先輩って2年のとき部長と先輩と同じクラスだったんっスか」

「うん」





先生の視線に気が付いたは手塚の手をとって、手を挙げさせて・・・


「はい!先生!僕、手塚国光はこのたびの選挙に生徒会長として立候補したいと思います!」

「人の声音を真似て言うなっ!!」


あのときのの声、本当に手塚にそっくりで面白かったっけ


「はい。じゃあ、手塚、選挙に参加ね」

「個人の意思は無視ですかっ!?」

「大丈夫!クニクニの応援者はこのボクがっ!引き受けるから!タイタミックに乗ったつもりで任せたまえよ」

、タイタミックは最後に沈んじゃうんだよ?」

「歴史は変えられるさ!」

「・・・・・・心配だ・・・」


まぁそんなこんなで手塚は生徒会長に立候補しては手塚の応援者として選挙活動を始めたんだ





「はぁ・・・・」

「それからの選挙活動が凄かったんだよ。僕も一緒にたちの手伝いをすることになって、最初に選挙活動をしたのが握手会だったんだ」

「握手会って・・・」







ピンポンパンポーン



『お昼の演説タイムになりました。それでは個々のアピールを開始してください』


『えー、コホン。本日のお昼休みに視聴覚室にて手塚国光の握手会を開こうと思います。
視聴覚室でボクと握手!

『だから、人の声音を真似るなと言っているだろうが!しかも握手会とは何だ!?初耳だぞ!?』

『バックアップは任せてって言ってるでしょ、クニクニ』

『クスッ。それじゃあ、皆、視聴覚室でねv』



ブツ・・・・・・・・・



演説タイムに使うはずの放送をただのお知らせに使って先生達に少しだけ怒られたけど

視聴覚室には手塚のファンや僕のファンあと、の隠れファンとかも来て3分間の放送の演説なんかよりずっと効果があったんだよ

なんだかんだ言っての作戦は成功に収めたってわけ

困っている生徒や不良に絡まれている生徒達を助けては「手塚国光をよろしくお願いします」って言ってたんだ

そういうことをして手塚とか気にいらない生徒にも手塚に好感を持たせるようにしたんだ

効果は絶大だったね





「すごい手口っスね。そのやり方を真似る人っていなかったんですか?」

「う〜ん。いなかったね」

「なんでっスか?もしかして裏でそういう輩を締め上げてたんじゃ・・・」

「そんなことしなくても、それだけのことをやる度胸がなかったんだと思うよ

ほら、みたいに変に度胸がある人ってなかなかいないじゃない?

「なるほど・・・」




選挙当日・・・・・・

全校生徒が体育館に集まって、演説を聞いてその場で投票するんだけど

手塚の番は一番最後で、やっと手塚の番にまわってくるといきなり手塚が演説しだしたんだ

本当なら、応援者がまず選挙の立候補者のいい所なんかを述べて「一票お願いします!」って言うんだけど

立候補者の手塚が先に演説をし始めたんだ

最初、なんかの間違いかと思ってたけど、そうじゃなかったみたい

手塚の優等生すぎる演説が終わってからがやってきてマイクに向かって言ったんだ

関係ないけど、そのとき被ってた帽子がね、昔を感じさせる学生帽だったんだよ



「皆さん、この度は手塚国光の演説にお立会いありがとうございます。

ボク、は手塚国光の応援者として、この場に居させてもらっています・・・

皆さん!手塚国光という男はこの日本にはすっごく珍しいほどの優等生であり模範生です!

希少生物です!人類の宝とも言えるでしょう!

こんな堅苦しい優等生が生徒会長になったら、この学園も規律、規律で、堅苦しくなってしまうでしょう!

しかぁし!!考えてみてください!

こんな欠陥品な人達が生徒会長になってでもしてみたら!

学園は規律を乱しまくり、暗黒の学園生活を送ってしまうでしょう!

学校とは本来、青春をする場所であります。

そのためには手塚国光のように少々お堅い方が学園の秩序を守り、青春がしやすくなるのです!

皆!青春はしたいかぁ―――――!!!?

楽しい学園生活をenjoyしたいかぁ――――!!?


したいのなら手塚国光に清き一票をお願いします

手塚国光が生徒会長になった暁には

ボクことが堅苦しい学園にしないために

彼を監視し、彼の手助けをしたいと思います!

楽しい学園生活を送りたい者は手塚国光に生徒会長となる栄光の紙切れを差し出してください!





「こんな感じでの演説は終わったんだ。はカリスマそのものだったよ」

「・・・よくそんな演説を一語一句、しかも言葉を強調するところさえも間違えずに覚えていましたね」

「クスッ。それだけインパクトが強かった証拠だよ。皆が皆、の言葉に耳を傾けていたからね。多分、桃ですら覚えているはずだよ」

「で、どうなったんですか?」

「うん。体育館に集まって当選した人物にスポットライトを当てて選挙の発表をするんだけど・・・」




『それでは選挙の発表をしたいと思います』


僕とは自分達のクラスの方でスポットライトが回っている壇上を見上げて選挙の結果を待ってたんだ


「放送部の双葉君、張り切ってるね」

「放送部はいいよねぇ、事前に当選者がわかるんだからさ」

「大丈夫だよ。手塚がきっと当選するって。だって一生懸命がんばったじゃない」

「でも、でもさ、万が一クニクニが当選しなかったら?クニクニがタイタミックのように沈んじゃったらどうしよう

「う〜ん、それはそれで見てみたい気がするけどな・・・」



『生徒会長は手塚国光さんに決定です!』


ワ―――――――・・・・・・!!!



「やったぁ!クニクニが会長だぁ!!」

「何かおかしくない?普通、副会長から発表しないかな?」

「んー言われてみればそうだね」


『さて、肝心の副会長ですが!全校生徒が投票用紙にない名前を

用紙の隅っこに書いたため副会長はこの方になりました!これは異例の出来事です!!



双葉君が言い終わると同時にの方にスポットライトが降り注いだんだ



「は?え?なんでボク!?」


『そう!副会長はあの見事な演説をしてくれただぁ――――!!!』



放送部の双葉君の掛け声と同時に全校生徒の歓声の声が沸き起こったんだ





「あれはすごかったね。まさに異例の出来事だったよ」

「それで先輩が副会長に選ばれたんっスか」

「うん」

「でも、今年でまた会長、副会長が変わっちゃうんっスよね」

「そうだね。でも、やっぱり副会長は・・・」

不二は校舎の方に目を向けた。



!またお前はくだらないイベントを企ておって!!」

「くだらないとは何ですか!年頃の少年少女達はこういうイベントが一番面白い時期なんですよ!」

「だからって、予算はどうする!?」

「そんなのボクに任せておけば大丈夫です!タイタミックに乗ったつもりで任せてください!!

「ヤメロ!絶対に沈む!!」

「沈んでも一人くらいは助かりますよ〜」



校舎の中からと教師との愉快な会話がテニスコートにまで届いていた。



不二はクスッと微笑をもらしながら言った。


「副会長の座はしかいないよ」


















「・・・シュンシュン、ボクなんかが副会長でいいのかな?」

「いんじゃない?みたいなのが副会長でも。・・・・・・

「何?」

「副会長当選オメデトウ」

「ヘヘ。ありがとう」










+++あとがき+++

君はこうして副会長の座についたのだったぁ〜(ウルルン口調で)

君はきっと誰からにも愛される子なんだと思いますよ。

今回は不二の思い出話っぽくなっちゃいましたね〜

スポットライトと打とうとして、スパットライトと打ってしまいました。

何か怖いですね。スパッと切れてしまいそうで。