帽子交換






「勝って嬉しいはないちもんめ。負けーて嬉しいはないちもんめ」





・・・先輩は何かの童謡の歌を歌いながら俺の目の前を行ったり来たりしている


この動き、非常に不愉快なんだけど






「あの子が欲しい、あの子じゃわからん」


しかもこれで5回ぐらいはリピートされている

そろそろ俺もこの歌を覚えてきてしまっている・・・



「勝って嬉しいはないちもんめ。負けーて嬉しいはないちもんめ」


先輩は熱い眼差しで俺を見ている

目で訴えてくる・・・




―…リピートアフタミ―――――



そんな声が脳に響きそうなほど、目で訴えてくる



「隣のおばちゃんちょいと来ておくれ」

「鬼が怖くて行かれない」


しまった!つい口を滑らして歌ってしまった・・・!

先輩はしてやったりと俺に笑いかける

・・・しょうがない、こうなったら最後まで付き合うか


「お布団かぶってちょいと来ておくれ」

「お布団ぼろぼろ行かれない」

「お釜かぶってちょいと来ておくれ」

「お釜そこ抜け行かれない」

「あのコが欲しい」

「あのコじゃわからん」

「そのコが欲しい」

「そのコじゃわからん」

「相談しよう」

「そうしよう」



「決ーまった♪」














相談時間なしっ!!!??













「リョンリョンが被ってる帽子が欲しいっ!」

「はぁっ!?」

「リョンリョンは今、ボクが被ってる帽子ね」






なんか勝手に決められてる!!?


相談の意味ないじゃん・・・






「じゃんけんでボクが勝ったら帽子交換ね」

「・・・俺が勝ったら?」

「そのときは帽子交換なし!」


先輩がじゃんけに勝ったら先輩の帽子と俺の帽子を交換・・・か

絶対に勝たないと

だって、今日の先輩の帽子は麦わら帽子だから

これは絶対に勝たないと・・・

あ、でも、この人が勝つまでさっきの歌をもう一回やらされるのかな・・・?

うーん、困った


「いくよーせーの・・・」


先輩が合図を送る


「「ジャーンケーン、ポンッ!!」」


しばしの沈黙・・・

先輩の出した手はグー

対して俺が出した手はチョキ・・・



「わーい勝ったー♪」


ま、負けた・・・・・・


「よしっ!それじゃあ帽子交換しよう!」

「わかりました・・・」


俺は自分の帽子に手を伸ばし帽子を脱いだ

そして、先輩に渡す

じゃんけんに負けてある意味良かったかもしれない

歌だって最初からやらなくて済むし

そして、何より・・・

先輩の帽子を脱いだ姿が見れるから



「リョンリョンの帽子、ゲットだぜ!」

「いや、あげてませんけど」

「そんな固いこと言わないのー」



そう言って先輩は自分の麦わら帽子へと手を伸ばした

もう少しで見れる

先輩の帽子を取った姿が・・・!


ドキドキドキドキドキ・・・・


先輩の手が麦わら帽子のツバに触れた

と、思ったら次の瞬間には俺の帽子が先輩の頭に乗っかっていた







嘘お!!?


付け替えるところ

全然見えなかったんだけど!!!???










「はい。リョンリョンにはボクの帽子をプレゼント〜」


放心状態の俺に先輩は麦わら帽子を被せた


「いや〜リョンリョン、麦わら帽子似合うね〜」

「そういう先輩はなんか、どっかの野球ファンみたいですけどね」


メガホンとハッピでも着てれば、そう見える。確実に


「部活終わる頃に返しにくるから、その帽子無くさないようにつけててね」

「え・・・!?それって」





部活中はこの麦わら帽子でやれと!!?






「ん、じゃあ、またね〜リョンリョン」


先輩はそう言うとさっそうと走って行ってしまった

その後、俺は先輩の言いつけのままに

麦わら帽子を被ったまま練習に参加した


と、いうか帽子を外そうとすると、他の先輩やら何やらが外すのを阻止してきたせいもあるんだけどね・・・














+++あとがき+++

前々からやってみたかったネタでございます。帽子交換!

主人公は帽子には目がないのでね、リョマの帽子が狙われましたよ(笑)

ちなみに前回は海堂が狙われてリョマと同じ目にあっていたり・・・

はないちもんめって実は人買いの歌なんですよね〜

童謡とかの本当の意味を知ると怖いですね・・・