家族紹介






さん。好き。大好き」






開け口一番がその台詞かよ

一応、校内では優等生を演じている俺は今数学の課題をやっている最中だ

そんな俺の側に、窓から俺の部屋にが上がりこんできて、俺の横に腰を落ち着かせている


「ボク、さんがいてくれて本当によかったと思ってる。って、いうかさんがいない世界なんてありえない」

「・・・俺は今、数学の課題をやってる最中なんだ。邪魔だから向こうに行ってろよ」

「冷たいね」

「冷たくて結構」

「でも、そんなさんが大好きさっ!」



・・・・・・・・・

こんな風に『大好き』という言葉を連呼するは絶対に何かある


要注意だ




「大好きなさんのために貢ぎものも持ってきたんだよv」


は後ろに回していた手を前に持ってきてテーブルにその貢物とやらをのっけた。


「今日の家庭部で作ったスイートポテト」



・・・・・・・・・

がこうやって貢物を持ってくるときが一番危ない



気をつけろ





これは絶対に見返りを求めている証拠だ

一体、コイツは俺に何をさせる気だ・・・?

いや、もう大方の予想はついてしまっているが・・・



「で、なんだよ。今回は」

「さっすが、さん★話がわかる〜」

「できることなら、わかりたくないがな」

「今日のさん、冷たいよ?ま、そういうとこも大好きだけどねっ!」

「ワー嬉シイナー」

「棒読みだよ!!」



軽い小競り合いをしたのち、は俺の机の上に軽やかに乗ると、窓を開けて、自分の部屋へと飛び乗っていった

の方は丁度、窓の下にベッドがあるから、怪我もなく渡れる

こういうことができるのは、俺の部屋の窓との部屋の窓が50センチぐらいしか離れていないせいがある

こうやって、時々だけどお互いの窓を伝って部屋に出入りしている

そうこうしているうちに、が手に何か持ちながら窓枠に足と手をひっかけている姿が目に映った

俺はに手を伸ばした

手を伸ばした意図に気づいたのかが手に持っていた荷物を俺に渡した

そして、さきほど、俺の部屋にあがりこんだようにの部屋から俺の部屋へと入ってくる



「・・・古典?」


から受け取った荷物に古典の課題があった

プリント、一枚ではなく5枚

しかもそれに加えて古典の本を一冊読んで感想を書くというのもあるらしい


「そ。それ、明日提出なんだよね。だから・・・手伝って?」

「この課題、出たのいつだ?」

「う〜んと…3週間ぐらい前だったかな」

「そのぐらいの時間があるなら、こんなの終わってるだろ!?」

「だってボク、その課題まったくやる気なかったもん」


正直、眩暈がした

コイツの課題嫌いは今に始まったわけではないんだけど・・・

まぁ、コイツにしたら課題を出さなくてもテストでそこそこいい点とってるから

全体的に成績は普通より上になるからやらなくてもいいんだろうけど

・・・ったく、地道にコツコツ、課題をやってる俺はどうなんだよ・・・・・・


「しっかし、なんでまた課題をやるなんていい始めたんだよ?」

「実は・・・課題をやらなきゃ、シュンシュンに呪いをかけられちゃうんだ」

「呪いねぇ・・・」


基本的に俺は呪いとか黒魔術とか、そういう非科学的なことは信じてはいない

信じてはいないが、あの不二先輩から湧き出ている黒オーラを見ると

あの人なら非科学的なことも可能にするんじゃないかと思う


「あら〜なんか、騒がしいと思ったらちゃんが来てたのね」


古典のプリントを眺めていると家の長女である、歩(あゆむ)が部屋を開けて覗いてきた

歩姉(あゆねえ)は今からどこかへ出かけるのか、おめかししている


「お邪魔してます」


がペコリとお辞儀をした。そして、そのまま、歩姉に聞く


「歩姉、どこかへ行くの?」

「そうなの。これから菜々子とデートしに行くの♪」


デートと言う名のショッピングだな

歩姉は、ゆっくりしていってね。と言うと足軽に階段を下りて行った


「さて、じゃあ始めるか」

「そうだね。えーと、はいさん」


そう言って、俺にプリントを3枚手渡してくる

まさか・・・


「おい。これは何の真似だ?」

「ん?だから手伝ってほしいんだけど」

「手伝えって・・・俺にこれをやれと!?」

「そうだよ。だって、そうでもしないと間に合わないだろ?」

「それじゃあ、お前がやったことにならないだろ!!」

「大丈夫。大丈夫」


何が大丈夫なんだ。何が


「だって、ボクの字とさんの字、すっごく似てるもん」



・・・確かに、小学校時代、学校に行けなかったコイツに学校で教わったことを教えていたせいか

何故か、俺の字との字が見分けがつかないほどに似てしまったのだ



「つか、なんで俺が3枚なんだよ」


こちとら、数学もあるっちゅーのに・・・


「だって、さん見かけによらず古典…っていうか、文系得意でしょ?」

「見かけによらずっていうのは、余計だ」


どちらかというと俺は文系

特に、歴史系には強い

古い史実とか読むのは結構好きだったりする

それに引き換え、は理数系だ

あっ、いいこと思いついた


「なぁ、

「何?」

「俺がプリント2枚やって感想文書くから、お前は残りのプリント3枚やって俺の課題である、数学をやれ」

「え〜!?」

「文句言うんなら手伝わないぞ」

「わかったよ。やればいいんでしょ!やれば!」

「そうだよ。やればいいんだよ」

「何だよ、その言い方ー!!数学の課題やってあげないからね!」

「お前、自分の立場わかって言ってんのか?」

「うっ・・・」



なんだか、どっちがどっちを手伝っているのか分からなくなってきたな

は渋々ながらも自分に課せられたノルマをこなすべく俺の向かい側へと周りテーブルに座って筆を進めた

その光景を見て、俺もやるか。と思ってシャーペンを動かそうとした

と、その時に勢いよく俺の部屋のドアが開いた





ー!!あたしのピアス知らない!?」





けたたましい音とともに現れたのは家の次女である、駆(かける)

姉貴は歩姉と違ってパンク系な服装に身を包んでいる

ちなみ姉貴は現在、青春学園高等部の2年だ


「知らねぇよ。何でもかんでも俺に聞くなよ」

「だって、アンタいっつもあたしのピアスを無断で借りてくじゃない」

「あれはピアスじゃない。カフーだ」

「耳につけるんだからどれも同よ!!」

「違うものだから、名前も違うに決まってんだろ」


俺と姉貴は趣味が結構似ているため、部屋の飾りとか、服とかも似たような感じになる

そのため、お互いのアクセサリーなんかはよく、貸し借りしている






「テメェなんか、これでも喰らって死んじまえ!!」






ブンッと思いきりよく投げ出された黒い物体を咄嗟に受け止めてしまった

ドアにいる姉貴に「チッ」っと舌打ちされる

俺はその受け止めた、黒くて重い物体をよく見てみた

それは






砲丸だった






何故、ここに砲丸がっ!?

というか、何で姉貴はこんなものを持っているんだ!?

しかも、さっきのスピード、どう見たって秒速の域だったぞ!?

と、我が姉についてもんもんと考えている間に、姉貴はがいるのに気づいたのか、の方へ行って話していた



ちゃーん。来てるなら声かけてくれたっていいじゃない」

「すみません。駆ちゃんは相変わらずパワフルだね」


パワフルで片付けられることか?コレ


「まぁね〜そこらの男どもには負けないわよ!」

「頼もしいなー」


少しは歩姉を見習って女らしくしてほしい気もするけどな

姉貴は俺同様、凄まじい格闘センスの持ち主だ。そんじょそこらの男相手では負けはしない

というか、姉貴が負けた姿など俺が生きてきた中一度も見てないし、そんな姉貴を想像することもできない


「私ならちゃんを一生守ってあげられるわよー」

「ボク、そんなに弱くないよ。逆にボクが駆ちゃんを守ってあげる」

「やだ、ちゃんったら」

「あっ、そうだ。スイートポテト作ったんだけど駆ちゃん食べる?」

「食べる〜♪」



に抱きついた体を放して両手を上げて喜び、からもらったスイートポテトをもぐもぐと口に頬張っていく



「・・・おい、姉貴」

「なんだ?」

「ピアスの件はもういいのかよ」

「あっ!そうだった!!って、いうか、もうこんな時間!」



時計を見た姉貴は血相変えて俺の部屋から出て行って




「神堂さんのライブに遅れちゃう〜〜〜〜〜」




と叫びながら家を出て行った

・・・これでやっと課題に集中できるな



さんの家族って皆、愉快だね〜」

「愉快すぎる気もするけどな」

「いいじゃん。飽きないで」

「あー確かに飽きないな」



チラッとを見る



「?何?」

「いや。それより、早く課題を済ませようぜ」

「え〜!?何?何なのさー!!」

「・・・ただちょっと、俺の家族が愉快じゃなくて、お前の方が愉快なんじゃないのかなって思っただけだ」

「はあ?」


は心外そうな顔をして俺を見る

そんなを見て俺は喉の奥で笑った


「ボクのどこが!?」

「手が止まってる」

「あぁ!そうだった。・・・って!今、はぐらかそうとしたね!」

「してねぇよ。注意しただけだろ」

「そうだけど・・・そうだけど!」

「そうだな、強いて言うならお前の脳みそが愉快かな。お前の考えてること、わけわかんないし」

「なっ…!まるでボクが変人みたいな言い方しないでよ」

「誰もそこまで言ってないだろ?何、怒ってんだ」

「うわームカツク!人の揚げ足ばっかとって、そんなに楽しい!!?」

「ああ。楽しいね」

「むむむむむ・・・ふんっ!でもそんな意地悪なさんがボクは大好きさっ!」

「俺はからかいがいのあるが大好きだよ」

「嫌味で言ったのにー嫌味で言ったのにぃーー!!」

「二回、言わなくてもわかるから」



こんなことを言っているけど、お互い手を休めずに言い合っている

軽口を叩きながら課題やって、が持ってきてくれたスイートポテトを口に運ぶ

程よい甘さが口に広がった








+++あとがき+++

何が書きたかったんだろう、自分・・・

とりあえず、君に「大好き」と言わせたくて書いたのですが・・・

いつの間にかさんの家族紹介になってしまいましたね。

最初は菜々子さんと同い年の歩姉だけを登場させる予定だったんですけど

夢の中で、何故かもう一人の姉がさんに

何か黒い物体を投げつけている光景を見たので急遽、駆姉を登場させました。

魔利の友人Leoが「さんと、セットで好き」とか「会話が好き」とか言っていたので

今回は会話重視(?)でやってみました。

こんな軽い口論は毎度のことなのですよ。

ちなみに駆ちゃんが言っていた神堂さん。あれは、ポップンでお馴染みの新堂さんのことですよ♪

魔利も新堂さんのライブ一度でいいから見てみたいです〜