避難訓練






「なんかさー避難訓練って、マンネリ化しててつまんないよねー」






という、副会長の一言で、このとんでもない避難訓練が開始されたのだ

この避難訓練の始まりの合図は俺の隣のクラスに桑射が




「全員、頭の上に手を挙げてそのままブリッジをしろ――!」



という脅迫(?)の声と悲鳴からだった

そこから事態は発展し、あらかじめ、立てていた計画を基にテニス部レギュラー陣に声をかけていった

今頃はきっと、副会長がいる放送室へとレギュラー陣が集まって

犯人達に捕まっている人質…つまりは生徒を解放するべく動き出している頃だろう




『諸君、待たせたね』



放送室から生徒会室限定で放送をしてくる副会長

今、俺…いや、俺達が集まっている場所は生徒会室

生徒会メンバーと、放送委員が一時的に集まっている



『人質を解放するべく鼠がうろちょろいるようだ。諸君には、鼠を退治してもらいたい』



…それにしても先輩、ノリノリだなぁ



『各自に渡した服と武器、無線機を持ったかね?』


その言葉に、各々の持っているものを確認し、故障していないかチェックする


『それでは、放送委員の諸君は人質を解放し各クラスから

10人くらい人質を選んで視聴覚室に集めて見張っていてくれたまえ』


放送委員達は一斉に敬礼をして生徒会室を出て行ってしまった

…本当、皆ノリノリだなぁ


『さて、生徒会メンバーは鼠を排除するために動いてもらう。

 まずは、ザキンとラビィはA地区』


コードネームまで用意してあるよ・・・

これは須崎と柊のことだよな


『プリンプリンとキングはB地区』


姫香と桑射だな

ってことは俺とリリィがC地区方面か


『最後にC地区方面の方はリリアンと武蔵。以上だ。健闘を祈る』





って!うおぃっ!!!!






「それ、俺の名前だし!名前で呼ばれたら即バレだろぉ!!?」



放送室にいる先輩には声は届かないと知りつつも叫ばずにはいられなかった

俺が叫ぶと同時に皆の顔が「えっ?」っとでも言いたそうな顔になる



「・・・なんだよ、その顔は・・・・・・」

「え・・・だって、ねぇ?」


姫香が皆に確認をとるかのように言った

すると、皆して頷いて言った




「「「「「今までギャンブラーが名前だと思ってた(ました)」」」」」








何だよそれえぇぇぇぇ!!!?








「ま、まぁ、気を落とすなよ武蔵。それより今は任務の方が先だろ?」

隅っこの方で体育座りをしていた俺に桑射が俺の肩を優しく叩いた

「く・・・桑射・・・・・」

「それじゃあ、俺達は先に行ってくるからな武蔵!」

「気をつけてね武蔵。それじゃあ行きましょうかキング」

「おう!出動だプリンプリン」

「では、ワタクシ達も参りましょうかザキン様」

「行くっス!ラビィ!」

「それでは、お先に失礼しますね、リリアンさん。武蔵様、お気をつけて」

「行ってらっしゃい〜」



皆が俺等を置いてさっさと任務に行ってしまった

・・・ていうか、ここで疑問



「なあ、リリィ」

「今はリリアンですよ〜ちゃぁ〜んと、コードネームで呼んでくれないと困っちゃいます〜」

「・・・なあ、リリアン」

「なんですか〜」

「さっき、皆が俺のことを呼んでいたのは名前の方か?それともコードネームなのかな?」

「なぁ〜んだ〜そんなことですか〜」



なんか、もういいや。嫌な予感しかしないから

聞きたくなくなってきた

しかし、それを伝える前にリリィが真実を口に出す方が早かった



「コードネームの方に決まってるじゃないですか〜」



やっぱり・・・・・・



「ふ、ふふふ・・・ふはははははは!!!!」

「?」



もう、こうなったらヤケだ!

日頃のストレスを桃城達にぶつけて発散してやる―――!!!



「行くぞぉ!リリアン!鼠を一匹たりとも生かして還すな!
殲滅じゃあぁぁぁ!!!












***








「で〜どこにー行くの〜武蔵〜?」

「俺達の担当するC地区には食堂がある。とりあえずはそこだな」



今はお昼時

この時間帯なら絶対、一人か二人は腹を空かせてやって来そうな場所だ


特に桃城あたりがなっ!!




そして、目当ての食堂に辿り着いた

ドアから覗き見ると、やはり桃城がいた。ついでに菊丸先輩も



「こちら、リリアン。C-8に敵、2名発見しました〜。どうぞ」



声を潜めて先輩に確認を取るリリィ

無線機からくぐもった声が聞こえた



『了解。では、生け捕りにして人質がいる職員室まで連れてくるように。どうぞ』

「了解いたしました〜」

「・・・じゃあ、行くぞ。リリアン」

「はい〜」



バンッ!


っと勢いよく食堂に入り込んだ俺達は上手く、桃城達の不意をついたようで、一拍、奴等の動きが遅れた

それを見逃すほど俺は甘くは無いので遠慮なく武器・・・何故かサイレンサーを桃城にぶっ放した

もちろん、本物の銃弾なんて入っているはずもなく、紅いペイント弾が出るだけだけど

桃城の額に紅いペイントがつくと、その衝撃で桃城は倒れた




「桃―――!!!」




仲間が一人やられて、菊丸先輩が叫んだ

まったく、桃城の死に(死んでません)構っている暇なんてないのに

リリィはこれみよがしにリリィの武器・・・何故かガトリングをぶっ放した


「やあぁぁぁぁ〜〜〜〜」


なんとも間が抜ける掛け声でガトリングを菊丸先輩に浴びせる





ドガガガガガガガガガッ!!





・・・菊丸先輩がペイント弾のおかげで全身真っ赤になって倒れた

う〜ん、これが実弾だったら死んでるな・・・



「こちら、武蔵。捕虜を2名捕獲した。ただちにそちらへ運ぶ。どうぞ」

『了解』



とりあえず、視聴覚室にいる放送委員の奴等に無線をかけて報告しておいた

さて、と・・・

まず、桃城達が持っている無線機を外し、両手を後ろで縛ってから、起こしにかかった



「おい、桃城!起きろよ」

「菊丸先輩〜起きてください〜」


ペチペチと頬を叩くと、やっと反応してくれた


「な・・・武蔵!?俺、死んだはずじゃあ・・・」


桃城のその言葉に、俺は呆けた


「ど、どうしたんだよ・・・武蔵・・・・・・」

「スマン!桃城!お前、こんなに良い奴なのに俺は・・・お前のことを・・・!!ゴメン・・・!」



まさか、桃城に感動されるなんて思ってもみなかった

良かった。一人でも俺の名前を覚えていてくれて・・・



「すみませ〜ん。菊丸先輩〜」

「にゃービックリしたー・・・あっ!コレ、ペイント弾!?」

「そうです〜」

「なんだ。そうだったのか」

「避難訓練で実弾使ったらヤバイでしょ」

「それもそうだな」

「でもさーこれが訓練でよかったよねーもしこれが本番だったら俺達、死んでたもん!」



なんて、ちょっと笑えない話を少しした後、桃城と菊丸先輩を視聴覚室へと連れて行った

中に入ると見張りである放送委員の二人が銃を向けた

だけど、すぐさま見方だと認識すると銃を降ろし、俺達を中へと入れてくれた

おかしいな。放送委員って二人だけだっけか?もっといたように思えたんだけど・・・

視聴覚室へと行くと、すでに床に寝転がされている物体がいた



「うおお!?越前!大石先輩!海堂も!」

「やあ、桃、英二」

「大石〜!!」

「ケッ…テメェも殺られたのか」

「うっせーな、うるせぇよ」

「にゃー…ところでオチビ達は誰に殺られたのさ」

「俺と海堂はキングとプリンプリンって呼ばれた子に殺られたんだけど、越前は・・・」


皆して、越前の方に向く

すると、越前は言いにくそうに小さな声で言った










「・・・・・・・・俺は仲間に売られました」








うん。それは・・・なんというか・・・・気の毒だな

気の毒過ぎてかけてやる言葉もない



「・・・越前、大変だったな・・・・・・」


桃城が越前に肩をポンと叩いた


「・・・それじゃあ、桃城と菊丸先輩。この人達と同じように床に寝転がってください」


身動きを取れないように縄で縛ってから床に寝転がせ、その背中にベタッと“死亡”という紙を貼った

ちなみに越前達のほうには“捕虜”の字が書かれた紙が貼り付けられている

俺はここで、何人の鼠を退治したかを数えてみた


一人は1年レギュラーの一人の越前

二人目は2年レギュラーの海堂

三人目は同じく2年レギュラーの桃城

四人目は3年レギュラーの菊丸先輩

五人目は同じく3年レギュラーの大石先輩

そして、六人目が・・・・・・・・・・・・・・・須崎・・・って、アレ?須崎???



「って、何で須崎が倒れてるんだよ!!?」

「武蔵。ザキンだよ〜」


律儀に訂正をするリリィ

俺の問いに答えたのは須崎のパートナーの柊だった


「それが・・・乾先輩の武器に当てられてしまったのです・・・」

「武器・・・って」

「ええ。もちろん乾汁のことですわ」



乾汁が武器・・・・!!?

・・・ま、まぁ、あれは世界最強のバイオウェポンだろうな・・・・・・



乾汁に勇猛果敢に挑んでいったであろう須崎に、俺は手を合わせ祈りを捧げた


「まだ死んでないっス〜〜〜〜・・・」


須崎の幻聴が聞こえた気がするけど、この際無視

さて、残りの鼠は

一年レギュラーのあの双子だろ・・・

それから、三年の乾先輩に手塚先輩に・・・・・・・・・・・・・不二先輩





強敵だ



特に不二先輩が






これからは戦略を立てて行動しなきゃいけない

そう思い、俺は思考を廻らせることにした

すると、何かが床を転がり出てきた

それを確認するよりも早くそれは暴発した



パン、パン、パン・・・!!!!



その音に驚いてか、人質にされていた約400人がパニック状態になってしまった

俺はこの酷い状況の中で漠然とだが、視聴覚室に投げ込まれたものを理解した


アレは、鼠花火だ・・・


理解したと同時に敵がこの混乱の中に紛れ込んでいることを察知し、すぐさま臨戦態勢をとろうとした銃を構えようとした





「クスv死にたくなかったら、銃を降ろして、おとなしくしてね」





が、それは俺の背後へ、気配もなく立って脅しをかける不二先輩の存在によって阻止された

俺は降伏の意を含めて銃を手放し、手を上へ上げた

あれよこれよ、といううちに一気に形勢逆転され、俺達、生徒会メンバー+@は敗北してしまった



。任務完了だ」

『了解。今からそちらへ向かうので待機してくれたまえ』



手塚会長が先輩に連絡をする

先輩が来る間、パニック状態に陥っていた人達―何故か女子が多いがこの際気にしない―を介抱してあげていた

その時にはパニックの時とは違う色の叫び声をあげながら

大多数の女子生徒が「これで、死ねるのなら本望・・・グフ・・・・・・」と言って倒れていった

しばらくして、先輩とその左右に先輩を守るようにして立っている桑射と姫香が視聴覚室に姿を現した



「避難訓練無事に終わってオメデトウ―――!!」

「めでたくない!何なんだ!この避難訓練は!!」



手塚会長が先輩に食って掛かる

無理もない

だって、手塚会長には一言もこんな避難訓練にするなんて言ってなかったし



「うん。いい質問だね、クニクニ。今回の避難訓練は火事や地震を想定して行うものではなく

テロを想定して行ったものなんだ。中々スリリングで楽しかったでしょ?」

「でもさー、よくこんな企画提案、通ったね」

「新しく、斬新な企画。尚且つ、在り得なくないからって校長先生から一発OKもらったんだよ、マルマル」



ニッコリとそれはそれはとても素敵な笑顔で言いのける先輩

すると、突然放送がかかった

辺りを眺めて見ると放送委員がいない

なるほど、これは放送委員か





『これにより、今日の避難訓練を終わりにします。直ちに総員、体育館へ集合。繰り返します―…』





この何だか意味深な放送のおかげで、辺りが静かになった

途中から放送が遠くなった

多分、校内放送ではなく、校外放送へとチェンジしたのだろう

静かになったおかげで、校外放送にしても放送がより良く耳に響く

その中で先輩が笑顔で皆に告げた




「さっきのテニス部VSテロ犯人の攻防を体育館で流すから、皆、体育館へ急ぐといいよ」




先輩の言葉に皆して「え?」という顔になる
                      
   うやうや
そんな中、桑射と姫香は視聴覚室の扉を恭しく前回に開け放つ







「総員退避――――!!!!」






と、一際響く声でそう言うと、その言葉に後押しされたように人質とされていた生徒達が一斉に視聴覚室から出た

生徒達がいなくなった視聴覚室には生徒会メンバーとテニス部レギュラー三年しかいなかった



「まったく、何時の間にそんなもの作ったの?」


苦笑交じりに言う不二先輩


「えっへへ〜♪実はね、放送委員の人達に手伝ってもらったんだ」

「ということは、最初から俺達のこを撮っていたのか?」

「その通りだよヌイヌイ!」

「データを取る側が、逆に撮られるとはな・・・」

「全然、気が付かなかったね」



不二先輩や乾先輩達に気づかれずにカメラを回してた放送委員達は一体、何者!?



「さあ!こんなところに居ないで、早く体育館に行って、ビデオを見よう!」


先輩は手塚会長の腕をぐいぐい引っ張りながら視聴覚室を出て行った

その後に続いて不二先輩達が出て行く



「俺らも行こうぜ、ギャンブラー」

「早く見たい〜♪」



リリィと桑射に背中を押されて、俺達、生徒会役員も視聴覚室を後にし、体育館へと向かう




ってか、ギャンブラーに直ってるしっ!!!








ビデオの出来は・・・

もう、凄いとしか言いようがないくらい凄かった








+++あとがき+++

やっと、書けました!避難訓練ネタ!

実はこの話、踊る大捜査線〜レインボーブリッジを封鎖せよ!〜を見てから考えていたものなのです。

コードネームを呼ばせたかったのと、「総員退避〜!!」ってのが書きたかったという思いが強かったので

ここまで筆を動かすことができました(笑)

ちなみにさんはテニス部メンバーをカメラ片手に追っかけてた一人です。

んで、編集は双葉部長(笑)

リョーマを売った張本人は双子です(笑)

ま、リョーマさんのおかげで人質がいる場所を把握できたんですけどね〜