悠々自適






さん待った―――?」





ボクはさんと待ち合わせていた場所に息を切らせながら駆け寄った

さながら、デートで遅刻した彼女のよう


「あれ?今日は金髪だね。またキレイに染めたね〜」


さんは明らかにご機嫌斜めだったので、髪のことを褒めてみる

さんは純日本人で黒髪だけど

こうして休日の日になると “一発!七色染め!!” っていう一日染めを使って髪を染めている


「そんな骨休めな言葉で俺が機嫌をよくすると思ってんのかよ」

「ごめんよーさ〜ん。体育祭の資料まとめで忙しくってさぁ〜」

「ったく・・・お前が来ない間に5回以上は逆ナンされたんだぞ」

「さすがさん!モテモテだね〜」


さんは見ての通り男前

かっこいいんだわ。これが。ボクにもその男前度を分けて欲しいよ

でも、なぜかボクと一緒に歩いているとさんに声をかけてくる女性がいないんだよね

ボクが離れていると寄ってくるのに・・・

なんでだろ?


「今日もいつもの店だろ?オラ、さっさと行くぞ」

「うあぁ・・・待って、待って――――」





いつもの店、雑貨屋さんの「サリィ」へと向かった

ここでボクはいつも布とかを買ってるんだ。ここ、普通の店より安く買えるからね

いわば、この店の常連客。店長の紗離さんとも仲良しこよしの仲なんだ


「今回はどんな被り物を作るんだ?」

「今日はそっちの布を買いに来たんじゃないよ。体育祭のための布を買いに来たんだ」


そう。今日は新作の帽子を作るための材料を買いに来たのではなくて

来週行われる体育祭のための布を買いに来たんだ



買い物が終わってボクとさんは軽く昼食をとろうとレストランへと入った

中の席が満席だったので外の席に陣取った

ボクをなるべく日のあたらないところへと座らせるさんの心遣いがなんともいえない

さすが、ご近所さん

10年以上も付き合ってると心が通じ合うものなのかな


注文をしたあとに携帯のメールの着信音が鳴り響いた

携帯を広げて中身を見てみる



 宛名 : シオシオ
 件名 : 今日は疲れたわー
 ――――――――――――――
 あぁもう…今日は豪い目にあったわ
 俺の部活の…前に話した女帝の
 跡部っちゅーやつがな
 俺ら部員を連れて買い物に
 付き合わせたんや。
 樺地だけ連れて行けっちゅーんに…
 今はアイ・ラヴ・愛っちゅーとこで
 昼飯食うところ。
 は昼飯何食った?



メル友のシオシオからだった

アイ・ラヴ・愛って今ボクとさんがいる店じゃん

とりあえずシオシオに返事を打って送ってあげた




「おっ来た来た」

「そういえばさー侑士、最近メールばっかやってるよなー」

「なんだよ忍足、出会い系でもやってんのか?」




ボク達が座ってる席の前の席に8人ぐらいの人達が座っている

その人達のセリフの中に“忍足”という単語が入っていた・・・

忍足・・・?

そういえば、ボクのメール相手の本名は 忍足 侑士 だったはず

♪〜

あっメールが来た



 宛名 : シオシオ
 件名 : Re:お疲れ!
 ――――――――――――――
 あーもう、コイツラ煩くてかなわんわ
 へーもアイ・ラヴ・愛で昼食
 食うところやったんか。奇遇やね。



・・・ちょっと探りを入れてみようかな



 宛先 : シオシオ
 件名 : 本当だね〜
 ――――――――――――――
 奇遇といえばね、ボクの前の席に
 いる青っぽい髪の人のことを
 シオシオと同じ名前で泣き黒子の
 人が呼んでたんだよ
 忍足ってそういなさそうな苗字なのに
 偶然ってすごいね!



送信っと・・・ピッ!


「おい

さんの声がふいにかかって携帯から顔を上げる

「お待たせしました。こちら、サンドイッチセットです」

店員さんがすぐ近くに来てたのか

ボクはサンドイッチセットを受け取った

「こちらが、海藻セットになります」

さんが注文していたものを受け取るさん

今、さんのなかでは海藻がブームなんだってさ




「なー侑士!俺にもメールの内容見せてくれよ!」

「あかん!これは俺ととの秘密のやりとりなんやから!」

「な、なんかラブラブみたいですね。忍足先輩」

「え!ということは侑士の彼女!?」

「それじゃあ、見られたくないわけだ。なあ樺地」

「ウス」




あそこにいるシオシオも大阪弁しゃっべてる

もしかして、このメールのシオシオと同一人物?


!!!!!!!


「ちょっ!ちょっとさん!!!それ、ボクの卵サンド!」

あろうことかボクがよそ見をしている間にボクの大好物の卵サンドをひっつかんで食べてしまった!

「いいじゃん。一個くらい。幼馴染のよしみだろー」

「幼馴染でもなんでも、限度っていうもんがあるだろー!」

既に聞く耳持たず

さんはボクの卵サンドをモリモリと食べ始めた

そして三口で食べ終えてしまった

なんてこった!!!


「今すぐ吐けー!吐くんだー!!ボクの卵サンド、カムバ〜〜〜ック!!」

「別に吐いてもいいけど、吐いたものどうするつもりなんだよ」

「どうするもこうするも!埋葬するに決まってるじゃないか!!

 あぁ…ボクのお腹に収めるはずの卵サンドがあろうことか誤ってさんのお腹の中に入っちゃうなんて…

 うちの子の責任とってくれます!!?」



最後の方の言葉だけ何故か奥様口調になっていたけど、それはあえて気にしない方向で


「まーまー落ち着いて。これ俺のでよかったら食べてーな」

「い、いいの・・・シオシオ・・・・・・」

「ええって、ええって。気にせんでええって。


「「・・・・・・・・・・・・・」」


「「ああっ!!メールのっ!!!?」」



二人してビックリ

やっぱりシオシオは前の席のシオシオと同一人物だったんだ!

しかし・・・こんなカッコよかったなんて・・・

そういえばシオシオの連れの人達も美形ぞろいだ


ボクの劣等感がさらに増すよ・・・



「この人が例のさん!?」

「へー以外とかわいいじゃねぇの」


「・・・コイツの外見に騙されるなよ。こう見えても中3で男だからな」



「「「「「「 マジ!!? 」」」」」」」






それからは、みんなで円を囲み自己紹介やらなんやらをした

泣き黒子の人が例の女帝さんだったとは・・・

でも、話してみてわかったよ

この人は立派な女帝だってことを


いろいろと話し込んでたらもう4時になってた



さん!はやくあのお店に行かないと閉まっちゃうよ」

「あっほんとだ」

何を悠長なことを言ってるのささん!

「どこ行くん?」

「ローションセンター」

「なんでまた、そんなところに?」

ピョンピョン(岳人のこと)が聞いてきた

「ボク、ちょっと特殊な体質でね。特注の日焼け止めローションがないと外歩けないんだよ」

「早くしろ」

わかってるってば

急かさないでよ




「ローションセンターなら、俺の企業が運営してるぜ」




はいっ!?

今、なんとおっしゃりました女帝さん!?




「そういえば、跡部財閥が運営してたっけ。あのローションセンター」

ドシドシ(宍戸のこと)がサラリと言う

あ、そういえばこの人達あのお坊ちゃま学校の氷帝学園の生徒なんだっけ・・・


「その、特注のローション。俺が発注してお前ん家まで届けさせてやるよ。ローション番号知ってるか?」

「う、うん。知ってるよ」


まさか、こんなところで大物人物(?)に出会うとは・・・人生って本当に何が起こるかわかんないよね〜

ボクはケンケン(跡部のこと)にローション番号をメモった紙を手渡した

よかったローション番号をメモっといて


「あと、携帯番号とメアドもよこしな」

「へ?なんで?」

「ローションがなくなったらすぐに届けられるようにだよ」


なるほど

ボクはケンケンのメアドと交換した

ケンケンって以外といい人っぽい?

シオシオが話してたケンケン像とはかなり違うような・・・









そんなこんなでリョンリョン家に無事に帰宅

リョンリョンの部屋でくつろいでいるとシオシオからメールが来た



 宛名 : シオシオ
 件名 : 今日は楽しかったで
 ――――――――――――――
 気ぃつけな
 ああ見えて跡部は面食いなほうやからな
 誰にでも優しくするヤツちゃうんやで
 今日の跡部のあんな姿は初めてや
 多分、のことを気に入ったんちゃうんかな
 それじゃあ、ほなな



ボクはシオシオに返事を書いて送信した

すると、さんから電話がかかった


ん?どうしたんだろう・・・?



『おい!!!』



ボクは思わず耳を塞いだ

さんの罵声はまだまだ続く


『テメェ!俺のメアドをあのナルシストに渡しただろう!!』


ナルシィー・・・ああ!ケンケンのこと!

でも、確かにボクは自分のメアドを渡したはず・・・・・・・・・・あっ・・・


『俺のところに奴のメールが受信されてた!』


どうやらさんはケンケンのことが嫌いらしい

さん、三度の飯よりナルシィー、嫌いだもんね〜 (ん?何か違う…)

・・・これはきっと卵サンドの呪いだよ!きっとそうだよさん!!


さん!今度こそ本当のボクのメアドをケンケンに送って〜」

ケンケンのメアドまだ知らないから…

『しゃーねー・・・これでよしっと』



さすがさん。手際がいい


『よっしゃ、あとは携帯を解約するだけだ!』


さんはじゃあなっ!っと言って携帯を切ってしまった

ていうか、メアドだけ変えればそれでいいんじゃ!?



そのすぐ後にリョンリョンとジロジロが帰ってきた

もの凄い量のテニスボールと一緒に

スミレちゃんのお孫さんのサクサクにテニスを教えに行ったのになんで大量のテニスボールが・・・?

あっ、もしかして


テニスを教えてくれてありがとう。お礼にコレ・・・受け取ってください

ははは。ありがたく頂いていくよ


ってな感じで貰ったのかな?

でも、こんなにたくさんのテニスボール、どこにしまうんだろう・・・・

めぐまれない子供達に寄付でもするのだろうか・・・








+++あとがき+++

主人公の友達を出したくて書きました・・・

そして、主人公のメル友を書きたくて書きました。

前々からメル友の相手は決まってましたんで。

しかし、まぁ・・・久々に夢かいたなぁ・・・