花 火 の 夜






思いっきり吸い込んだ。
私の15の夏。








「すごい、人だねぇ…」

「年に一回だからね」



おろしたての浴衣。

下駄なんて履いてたら足が使い物にならなくなると、

お姉ちゃんに脅され、泣く泣くはいた草履。

いつもとはすこし、否、かなり違う格好。





そんな私をみて彼、不二周助は少し微笑んだだけだった。

...期待していたわけじゃないけれど。





それでも、同じ速さで歩いてくれるところに、単純な私は愛を感じちゃうわけで。

調子に乗って、手も繋いじゃったりするわけですよ。





人ごみのなかで、はぐれないようにひたすらおいかけて。

そりゃ、いろんな意味で目立つ不二ならきっと私はみつけられるだろう。

でも、私は?

不二はこんなちっぽけな私なんかみつけるなんて、到底無理だから。

だから私が一生懸命、追いかけるわけでして。





「あ、なんか食べる?」

「...カキ氷とかどうでしょう?夏の風物詩でっせv」

「何味?」

「レモン、汁だくv」

「(カキ氷に汁だくって...)」

「なに、その顔ー。いいじゃん、汁だく」

「添加物の取りすぎ」

「いぃのー。不二は?」

「ブルーハワイ。レモン一口頂戴」

「アイアイサー」





不二の奢ってくれたかき氷は、やっぱり冷たくて。





「冷たい…」

「ぬるいカキ氷ってあるの?」

「率直な感想。あぁ、私って素直」





苦笑してる奴は放っておいて。

二人で神社の賽銭箱の前にすわる。

途中で買った、焼き鳥と烏龍茶もちゃんと添えて。





「花火なんて久しぶりだよ」

「え?意外」

「なんでー、そんなに私が祭り事すきそうに見えますか?」

「うん(即答」

「...」

「英二も も、祭りやってたら一目散で行きそうなイメージ」

「私のイメージなんて所詮...」





周りに人気なんかない、この場所は、只蝉の鳴き声が耳に響く。

一週間の勝負どころ。





「...私、花火嫌いなの」





深く深呼吸して話し始めた。

口から入ってくる空気は生あたたかくて。

カキ氷のおかげで冷え切っていた私の口内は、通常の温度を取り戻した。





「小さい頃からあの音が苦手で...こう、なんていうか身体に響く感じが…」

「うん」

「イメージだと、なんだろう。地震とかくると、逃げればいいのに一時停止しちゃうじゃない?

 で、あとで怖かったーって不意に身にしみる感じ。

 花火も全く一緒」

「...それ、わかる」





微笑む不二が綺麗だと思ってしまった、私は負けかもしれない。





「大丈夫?今日」

「平気でしょ。15だから〜♪」





私が歌った、松本伊予のセンチメンタルジャーニーはどうやら不二は知らないらしい。





「ジェネレーションギャップかしら...」

「中3で何年前の曲歌ってるの」







ドォォン







いつのまにかに、空には花が咲いていた。

満開。

花が散って。





「うわぁぁ...」





思わず感嘆の声をあげてしまった。





「花火ってこんなに綺麗なものだったんだねぇ...」





時間が止まっているみたい。

綺麗過ぎて怖くなる。





「ここの花火有名だしね」

「で、でもすごぉぃ...」

「そう?」

「なんでそんなに冷静なのかなぁ...」

「え、結構興奮してるよ」

「(どこが...)」





...






「もう終わりかなぁ...」





遠くで人がざわめく音がする。





「そうだね。帰ろうか」





差し出された手を思わずとってしまった。

感動の余韻がまだ残ってる。





「ちょっと待って」

「どうかした?」

「めいいっぱい、夏の空気を吸っておきたいの」





蝉の音。

花火の余韻。火薬の臭い。

人のざわめき声。

カキ氷の空パック。

不二。







全部私の夏。





「...ご満足できましたか?姫」

「えぇ、そりゃあもう」







きっと、ずっと忘れない。

全部。私の夏。




センチメンタルジャーニーは知っていて当たり前だと思ってました...
そんな私はヒロインと同年代。
天神さんはご存知ですよね?!(聞くな)
何はともあれ、ご注文(「夏らしい不二夢」)に添えたかどうかは、よくわからない結果に
なりましたが、煮るなり焼くなりもってけ泥棒!(笑)状態で。
一周年、おめでとうございますv



みかんもどき



22:29 2004/08/10




一周年記念リク夢小説、どうもありがとうです〜vv
あぁもう!これだから、みかんさん大好きですv
あんなイラストの変わりにこんなに素晴らしいものをくれるなんてvv
あれ?ヒロインと同年代だったのですか!?
ス、スミマセン。最近記憶が混雑してしまっているので…
聞いたような、聞かなかったような……(汗)
本当に本当に、ありがとうございました!
みかんさんの方こそ一周年おめでとうございますv


 by 天神 魔利