Twins.番外編 バレンタイン攻防










ドサドサドサドサドサ☆



「うわー漫画みたいなことってあるんだね〜」



が言うように漫画みたく、俺の下駄箱の中から大量のチョコの山が流れてきた

そのチョコに飲み込まれた生徒が数人いたようだ

本能的に飛びのいていなければ俺も彼らのようになっていただろう

というか、この下駄箱…一体、どういう構造になっているんだ?

明らかに、この大量のチョコは下駄箱なんかじゃ留まれないだろうに…

もしかしなくとも、不二先輩の仕業かな…


「…俺、初めてバレタインという行事を恐ろしく感じた」

「同感だよ。越前君」


俺はチョコの山を見ながら溜息を吐きつつ言った










「これ、全部食べるの?兄」

「そう思うと胸焼けがしてくる…」



俺はそんなに甘いものは好きじゃない

甘いものはたまに食べる程度

そんな俺にこのチョコの山を食べろと…?

無理がありすぎるだろう



「うわっ!」



チョコの山を見つめながらそんなことを思っている時に越前君の叫び声が聞こえた

それと同時にチョコの山が越前君の下駄箱から流れ出してきた

うっかり逃げ遅れた越前君はチョコに埋もれてしまった



「リョマー!しっかり!ここ掘れワンワン!」



ちゃっかり避難していたがチョコの山を掻き分けて越前君を救出している

俺も越前君救出作業を手伝うか



「…チョコに埋もれて死ぬんじゃないかと本気で思った……」



無事、救出された越前君がげっそりしながら言った



「チョコで埋もれて死ぬのって餅を喉に詰まらせて死ぬのと同じくらい恥ずかしいね!」

「でも、餅よりチョコの方がいいと思うけどな。それだけ人気があるっていう証拠だし」

「なるほど〜いわゆる、モテ死にってやつ?」

「…二人共、そんなに俺に死んで欲しかった…?」

「「そんなことないけど」」

「なんでそういう時だけチームプレーがいいんだよ…」



越前君はハァ…と溜息をつくと、顔をあげ、の下駄箱を見た



「…の方も開けてみたら?」

「そうだね!俺も激流チョコを体験してみようかな」



は腕まくりをしながら、自分の下駄箱を開けた





ガチャ






























「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あり?」







「…何も起きないな」

「起きないね」



不思議に思った俺たちはの下駄箱を左右の隙間から覗いてみた

あぁ。これくらいのチョコだったら激流現象は起きないよな

そう。の下駄箱には、そんなにチョコが入っていなかった

せいぜい10〜20個ぐらい



「なんで〜〜〜〜????」



不服そうに声を上げる

世のモテない男が聞いたら逆上して殴ってしまいたくなるに違いない




















「納得できない」





下駄箱を後にして俺達は教室へと足を進めていた



…まだ、そんなこと言ってるの?」

「だぁって〜兄があんなにチョコ貰ってるのに、俺にはないって、何かおかしいよ!」

「別にいいじゃん。のチョコ、貰えば」

「そういう問題じゃないの」

まで大量のチョコ貰ったら、消費するのが大変になるだろ」

の場合はそうだろうね」

「溶かして固めただけのチョコだったら再利用できるからいいじゃん」

「「うわ、最悪」」



あげた人の気持ちを踏みにじるようなことを言うなよ…と、正論を言ってみたりする

うーん、でも、そうでもしないとあの大量のチョコを消費するなんてとてもじゃないけど無理だよな

むしろ、世界のめぐまれない子供達にチョコを寄付するか

これはこれで、踏みにじり行為だな



君!」



俺達の後ろから女子がに声をかけた

これは、もしかすると…



「おはよー」

「おはよう君、君、越前君」



見覚えがない女子生徒だから、きっとのとこのクラスメイトだろう

彼女は俺達に挨拶すると、鞄からチョコを取り出して俺と越前君に手渡した



「・・・俺は?」



チョコを貰えなかったことを疑問に思ったのだろうが非難の声をポツリと小さな声で呟いたのが聞こえた

その女子生徒はにだけ、チョコをあげなかった

あれ、あの展開からしてみたら、にチョコでもあげるのかと思ったけど、もしかしなかったみたい

彼女はくるりと身体をの方に向けると、至極自然に

そう、自然に

それが当然だと思っているような口調で言ってのけた








君は誰にチョコあげるの?」







「え?」





その言葉に、俺達三人は固まった

あげる?貰うの間違いじゃなくて?



「できれば、欲しいなぁ。君のチョコ」



そう言って、彼女は立ち去ってしまった

しばし、俺達の間に沈黙が流れた

その沈黙を破ったのは当事者の、ではなくて、越前君だった



「…って実は女?」

「なわけないでしょ!!一緒にお風呂入った仲じゃないか!」

「だよね」

「でも、バレンタインって元々はバレンタイン司祭が死んだ日で、告白とか贈り物をする行事だから…
 別に、女から男にチョコを贈るって決まってるわけじゃないんだよね」

「あー…チョコレート会社の陰謀ってやつ」

「うん」



だから、あの子の言っていることには、まぁ、納得できないでもないけど

それでもやっぱり違和感というものがある

それに、あの子の言い方だと

よく、女の子同士がチョコを渡しあう、友チョコってやつのように聞こえてくる

とすると、は…






「俺…男として見られてない…?」





・・・

越前君と顔を見合わせてからの肩に二人して優しく叩いてあげた









+++あとがき+++

この話し、多分去年の今頃書いてた気がします。

バレンタインのお話しでした。

この後、のチョコを使って、のチョコ(お菓子)を欲しがってた子達にあげました。

もちろん、男女関係なくね。というか、途中から関係なくなってきてしまったのでした〜お終い。

な、感じです。バレンタインの行事の結末的には。



2006/2/ 19