Twins.番外編  正義の授業参観










その日、俺達三人は一枚の紙っぺらを見つめて溜息を吐いた



「授業参観かぁー」

「はぁー」



・・・



「俺が溜息つくのはわかるけど
 何でまで溜息ついてるのさ。両親、旅行中なんでしょ?」



すると、みるみるうちに顔に生気が戻ってくる二人



「おお!そうだった」

「余計な心配した…」

達はいいよね。旅行に行ってて」



もう一度俺は授業参観と書かれた紙を見る



「えー?なんで?リョマのパパさん面白い人じゃん」

「どこが」



まったく、他人事だと思って…

まぁ、こんなもの親に見せなければいいだけの話か…












そして、とうとうその、授業参観の日がやってきた

一年生は4時間目が授業参観となっていて、この日の授業は数学だった



「誰?あの人?」

「え?かっこいい〜」



1組と2組の合同授業、体育が終わってから

更衣室から教室へと移動している時にそんな女子達の声が聞こえた

別に興味も無かったけど

噂の人物は中一の俺達よりもでかかったので自然と目に付いてしまう

見ない顔だなぁ…って俺が全校生徒の顔なんか把握してるわけないから

もしかしたら上級生にいるのかもしれない

そんなことを考えていたら、突然、その人がコチラに顔を向けてきた



「え!?嘘!!」

「なんでっ!!?」



と、一瞬にして二人が固まったのがわかった



「「父さん!!!」」



ダブルサウンドが廊下に響いた

思わず俺が耳をふさいでしまうほどの声だった

っていうか、父さん?新婚旅行じゃなかったの?



!会いたかったぞー!!」



そう叫びながら、二人の元へと走りより盛大に抱きつく

・・・顔はが大人になったらこんな感じかなぁっていう容姿なのに

性格はまんま



「あ、の友達’s!?」



視線がこっちにきた。とりあえず頷く



「それはそれは!僕はのお父様デス。その名は…」



なぜそこで区切る?



「マサヨシパパです!正義(セイギ)と書いてマサヨシと読むのです」



の顔での性格って、なんか変な感じ



「そこの二人の名前を聞いてもいいかな?」



ウインクする・・・・・正義さん



と同じクラスの越前…」

「リョマくんだね!!話には聞いてるよ!
 それじゃあ、そっちの彼がケンタくんだ!」



首肯するケンタ



「「そんなことより、どうして父さんがここにいるの!?」」



またしてもダブルサウンド

今日は特にハモるなぁ



「それに、その学らん!」



が正義さんの着ているものを指差しながら

さっきのセリフに付け加えて言った

・・・今までスルーしてたけど、正義さんの着ている服は

スーツでもなく私服でもなく、学らんだった



「そんなこと…」



ふ、と何故か勝ち誇ったように、自信満々に口元に笑みを作る



「一年間のスケジュ〜ルはスミレちゃんに頼んで把握済みだからなのだよ!」



はーっはっはっはっは!と高らかに笑う正義さん



「ちなみに学らんは高校の時に着てたやつね」



と、オチャメにまたしてもウィンクして言った

が「だから知らせたくなかったんだ・・・」と小声でつぶやいてるのが聞こえた

っていうか子供の授業参観に学ラン着てきちゃう親って・・・

さすがの父親だなって感心してしまうのはいけないんだろうか・・・



「あと2分で授業始まるぞ」

「お、遅刻はいかんぞ、若者よ」



今まで沈黙を保っていたケンタが腕時計を俺たちに見せた

正義さんが俺との背中を押す



「まずは二組からだ!あとでちゃんとの方も行くからな!!
 双子を持つ親は大変だなぁ」



しみじみつぶやく正義さん



!授業は何をやるんだい?」

「ん〜?数学だったはず。兄がねぇ、英語!」

「それは楽しみだ!」



とケンタと別れて教室に入ったら

見計らったみたいなタイミングでチャイムが鳴った







******







「・・・・・・・・のお父さんって・・・うまくいえないけど、凄いよね」



やっと、授業参観が終わって出た言葉がこれだった

は苦笑しながら言った



「あはは。楽しいんだけど、恥ずかしいんだよね」



うーん。みたいなのでも一般的な感情は持ち合わせているのか

いや、でも。他人じゃないからこそ、恥ずかしいのかもしれない



「・・・そっちでも、何かやらかしたのか?」



背後からケンタの声がして振り返ってみると、案の定ケンタとがいた



「なんで、伊吹もいるのー」

「俺も今日は学食だから御一緒させてもうことにしたんだ」



今日は、俺が学食なので、学食で食べる事になっていた

だから多分、ケンタの昼食の予定を聞いた

どうせならってことで連れてきたんだと思う

もしくは、ケンタ自身が一緒に行く、と言ったのかもしれないけど

の真向かいに、俺の真向かいにケンタが座ると

が授業参観の風景を聞いてきた



「で、のクラスはどうだった?」

「うん…それがね・・・」












「では、授業を始めたいと思うよ。中学入って始めての授業参観だ
 そんでもって授業参観にはもってこいの数学の授業
 皆予習してきてるかい?当てていくからね!」



生徒よりも張り切ってるんじゃないの?って感じのおばさん

なんでよりにもよって数学なんだろうな・・・部活でも会うっていうのに



「きゃー竜崎センセ!カックイー」



ええっ!!その声は正義さん!?

思わず後ろを振り返る

周りにいる生徒も後ろを振り返ってる

っていうか、教室の後ろで学ラン着てるから余計に目立ってる



「あんたは何学ラン着てきてんだい!!それと静かに見てなっ」

「ええ〜だってお家にあったし、着れるし、似合ってるでしょ?」



そう言ってその場で一回転する



「・・・・・・・授業を始める」



正義さんを無視することにしたらしいおばさんは黒板に問題を書き始めた



「前回の予習からだ。指名された者は前に出て答えてもらうよ!
 征矢(そや)、紫月(しづき)、越前、広海(ひろみ)、
 さっさと前へ出な!」

「はぁ〜い」



聞いたことある声が後ろから聞こえてきた

と、同時に前に向かっていく黒い影

あれは――――――










「意気揚々と正義さんが出てって答えを書いてったんだ…」

「もう、メチャクチャ恥ずかしかったよー…」



その後、おばさんに



「何でアンタが答えてるんだい!」


と怒られ、正義さんはケロリと


「え、だってだし
 それに、今は僕、学らんを着ているせいか
 なんだかとっても学生に戻った気分なんだよね!」



と答えた

どこか、このセリフに聞き覚えがあるのは何故だろうか

やはり血のなせる技なのか…

ちなみに問題の答えは正解だった



兄の方はどうっだった?」

「あー…俺達のところはねー……」



そう言って、が先ほどの授業参観のことを語りだした










「先生・・・」



迫水(さこみず)くんが手を上げた



「どうした?問題がわかんないか?」



先生が首をかしげた、のと同じくらいで父さんが入ってきたのが視界に入った

学ランが目立ってる



「ボク、もうダメです・・・」



ガタンと大きな音を立てて迫水君が倒れた



「大丈夫か!?迫水!!!」



先生が駆け寄る

迫水くんの意識がないのを確認すると



「保健室行って来るから、自習しててくれ!」



後ろにいた大人たちはざわめくだけで迫水くんに駆け寄る人はいなかった

迫水くんの両親は学校に来ていないみたいだ

先生は迫水くんを背負うと教室を飛び出した

・・・・・・・・・・・・・・どうすんだろう?

っていうか、いやな予感がするんだけど



「でわ、授業を再開したいと思いまっす☆」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・父さん



「えっと、お、この問題がいいな」



父さんはプリントを掴むと列の一番前に座っている生徒に配り出した

プリントを渡された生徒は戸惑いながら後ろの席に回す

っていうか、とてもクラスの視線がいたい

容姿で血縁関係がわかってしまうのも考えものだな



「リスニングを聴いて空所を補いつつ
 絵の説明として適切な文を選ぶんだぞ!」



配られたプリントには

公園で男女3人の小さい子供がごみを拾っている絵が描かれている



「いくぞー」



って、父さんがしゃべるの?

プリントにはA〜Dがあって

全てに【The kids are(   )the playground.】と書かれている



「A、『The kids are cleaning up the playground.』
 B、『The kids are playing in the playground.』
 C、『The kids are learing for the playground.』
 D、『The kids are fighting in the playground.』
 さあ、どーれだ?」



っていうか、Dって、ケンカしてるって・・・!?

父さんは満面の笑顔だ

いいのか、こんなハチャメチャなことして



「正解はA!みんなわかったかなぁ?」



先生もこんなことのためにプリント用意したんじゃないだろうに・・・



「むう、いい問題ないなぁ。じゃあ次はこの問題だ!」



黒板に英文を書いていった

【Let’s split the bill,shall we?】



「さて、これはなんて訳すでしょう?」



クラス全体を見回すと目の前に座っていた向笠(むかさ)くんを見て



「君に決めた!」



と、某100種類以上いるモンスターを集めたり戦わせたりする子供向けアニメ

の主人公のようにビシッと指を指して言う父さん

指された向笠くんはびっくりした表情をした



「えっと、splitって分けるって意味だから・・・・・」

「はい、時間切れです。正解は男同士ならではの割り勘しようぜ★でした」











「って感じで、先生が戻ってくるまで続いたんだ・・・」



は説明し終わるとため息をついた



「・・・・・・・・うん。なんていうか・・・本当に凄いね・・・」



ていうか、もはや凄いとしか言いようがない



「あーーーー!!!〜〜〜!!こんなところにいたぁ〜〜〜!」



出たっ!とか思ってしまっても誰も文句は言わないだろうと思う

ていうか、こういう登場の仕方、つくづくと似ているな…



「父さん…」

「帰ったんじゃなかったの・・・?」

「いやぁ〜学生みたいに学食でも食べて帰ろうかなぁと思ってね」



あれ、それなら達と一緒に来ればよかったのに

そうしなかったということは先にクラスを出て行ったのかな…?

もしくはその逆?

正義さんは両手でAランチを乗せたトレイをの隣に置いて

そのままの隣の席に腰をおろした



「リョマ君とケンタ君は学食なんだね」

「えぇ、まぁ…」



ケンタは頷くだけ



も?」

「俺達はお弁当」



ほら、とは二人揃ってお弁当箱を見せた



「そっかー学食も捨てがたいけど、やっぱりの手作り料理も食べたいなぁ…」



キラキラと何かを期待するような眼差しでを見やる正義さん



「…じゃあ、これとそれ交換する…?」

「両方食べたいから交換はダメ」



手でバッテンを作って主張する



「だから半分こしようv」

「うん!」

も、Aランチの中で好きなのがあったら取ってっていいからな!」

「それじゃあ、これ頂戴」



ひょい、と肉団子を持っていく

なんだか、ここだけいつの間にか家族の団欒みたいな

そんな雰囲気になってる



「リョマ君もケンタ君もほしいのがあったら取っていいからね?
 その代わり、何かもらうけど」

「あんたはなに生徒にたかってんだい!」



おばさんが正義さんの頭をはたいた

いい音がした



「いたぁー、何すんですかぁ?」



頭を抑えて涙目になっている

そんなに痛かったのだろうか?



「あんたのせいで授業参観が丸つぶれだよ!」



額に手をやるおばさん



「聞いた話じゃ、一組でも騒ぎを起こしたんだって?」

「やだなぁ、先生がいなくなたから代わりに僕が授業をしただけだもん」



・・・だもんって…



「最後には生徒たちに俺のおかげで英語が好きになりました!
 って囲まれちゃったしさ」



ああ、だからと一緒に来なかったんだ



「授業参観の主旨がわかってないようだね。
 はぁーまったく昔っから変わってないよ、南次郎も正義も」



昔からこうだったんだ…

え?ていうか、なんで親父の名前まで出てくるんだ!?



「おー懐かしいね南次郎!13年前に会ったっきりだ」



…もしかして、同学年……!?



「アンタ達二人で学園のツートップバカって言われてたっけねぇ」

「あはははは。スミレちゃん!南次郎はともかく、僕は違うよぉ」



バシバシと景気よくおばさんの背中を叩く正義さん

あ、なんだかおばさんの怒りゲージが

段々とマックスに近付いてくるのがわかる・・・



「ふ…全然、反省してないようだね。昔っから変わらないその脳みそ
 今度こそ、私が叩き直してやるよ!」



うわっ!目がマジだ。真剣と書いてマジだ

これにはさすがの正義さんも気付いたらしく



「む、もうこんな時間か!早く行かないとフランス行きの飛行機が出てしまう!」



正義さんは、バッと腕時計を見て確認をし

シュタッと素早く学食から飛び出した

その後を、年の割に素早い動きで追うおばさん



「くおらー待たんかいー!!」




その二人が行ってしまった学食では静まり返っていた



「…行ったね」

「てか、まだ新婚旅行中だったんだね」

「あるゆる意味で凄い人だな」



などと、俺、ケンタの順で言っていくと、突然が叫びだした



「あーーーーーーー!!!」



何事!?と思い、の方を見てみると…



「弁当がなくなってるー!!」



今までそこにあったの弁当箱がなくなっていた

・・・きっと正義さんが持っていったんだと思う

凄い執念だ

この日の二人の昼食は

正義が頼んでいたAランチを二人でわけて食べることしていた






後日、宅急便で綺麗に洗われた弁当箱が送られてきたそうだ

そして、授業参観後は正義さん話題がつきることはなかった







+++あとがき+++

今回のリレーは疲れました…

約5時間ぐらい延々とチャットでリレーしてました…

途中、これリレーやないやんけっと思ったりもしましたが、なんとか完結。

終わったときはベッドに倒れ込みました。

というほど今回のリレーは力を入れてマス。(阿呆)

しかし、正義さんは書きやすいですね。(笑)

神月はやっぱりこういうハッチャけた性格が書きやすいと改めて思い知りました。

                       by 神月 美依祢


今回のリレーは、とりあえず・・・

美依祢ちゃんお疲れ様!

でしょう。彼女はよくやってくれた。(笑)

念願の正義パパをようやっと出せたので魔利としては満足です!

正義さんとテニプリ陣を引き合わせたかったのですが

それやっちゃうとただでさえ長ったらしい文が

さらに長くなるのでやめときました。

親世代も書いてみたいですね(笑)

                      by 天神 魔利