紙金の錬金術師  〜本好きよwelcome〜










「イーストシティ、イーストシティ――・・・」


イーストシティの駅に汽車が到着した。

「やっと着いたかイーストシティ」

欠伸をし、背伸びをしながら小さい・・・コホン。金髪金目の三つ編み少年、エドワード・エルリックが降りてきた。

「も〜兄さん。入り口の前で突っ立ってないで、後ろの人がつっかえちゃうでしょ」

「悪ぃ、アル」

その後を追うように鞄を持った鎧、アルフォンス・エルリックも汽車から降りる。

「いやいやいや〜長旅だったね〜」

ヒラリと汽車から軽やかに降りたのは黒髪に青色の目をしただった。

ひょんなことからエルリック兄弟と知り合い、東方司令部まで同行することになっていたのだ。

本当は20歳なのだが童顔ゆえに15歳くらいに見られることもしばしばあるは実は錬金術が使えたのであった。




駅を降りてから三人は真っ直ぐに東方司令部めがけて表通りを歩いているハズだった。


「うわ〜〜〜!これ!まだ読んだこと無い!あぁ〜こっちにも〜〜〜vvv」

の瞳には星が飛んでいる。の周りには花も散っているように見えるのは気のせいではないだろう。

「「・・・・・・・・・」」


エルリック兄弟はそんなを見て、げんなりしていた。

は本屋を見つけるなり、本屋に駆け込んで行ってしまったのだった。

この光景を見ると、と最初に出会ったときのことを思い出してくる兄弟であった。









兄弟は賢者の石の手がかりを探し、西の歴史ある本の町、リックドワームという場所を訪れていた。

目的は、文献、古文書、錬金術書、などの掘り出し物を探すためである。

リックドワームはかなり、本の歴史が深いのでもしかしたらこういった類の本があるかもしれないとふんだのである。


「すっげー、どこを見ても本屋、本屋、本屋、本屋・・・!!」

「探し出すのも一苦労だね、兄さん」

「そうだな・・・でも、やるしかないだろう!まず、手始めにここの本屋を見ていこうぜ」

そう言うなりエドは近くにあった店に入ろうとした。


ブゥン!!


エドの目の前をすごい勢いで何かが通った。

「わっ!あっぶねー!!」

目の前を過ぎて去って行ってしまったモノを目で追うエド。

「なんだったんだ・・・一体・・・」

「ありゃー君が帰ってきたのかー・・・こりゃあ今に店がなくなるな」

エドが入ろうとした店から店長のおじさんが出てきて、ポツリと吐いた。

「店がなくなるって・・・どういうことですか?」

アルがおじさんに尋ねる。おじさんはアルの方を向き、一瞬ビックリしてから言った。

「まぁ、見てなって。リックドワームの名物って言うほど名物だから、見て損はないよ」

エドの目の前を通過して行った、台車に乗った黒髪の少年はある本屋の前に止まると本屋の中へと消えていった。

しばらくすると、大量の紙袋を持って少年が本屋から出てきた。

そして、少年が出てきた本屋はいそいそと店じまいをおっぱじめたのだ。

その光景を見て、エルリック兄弟は口をあんぐりと開けていた。

「どうだ!?すっごいだろう!店がなくなったのこれで27回目だ!」

「に・・・27回もあんなことしてるんですかっ!!?」

「ああ。そうだぞ。君はリックドワームでは神様だよ!」

さも、おかしそうに笑う店長。


エドは何かを思いついたようでアルに話しだした。

「27回もあんなことしてるんだったら、その・・・っていう人の家に行ったほうが手っ取り早くないか?」

「それもそうだね」

アルはエドの考えに賛成した。

「あの、すみません。っていう人の家、知りませんか?」

「それなら、倉庫がたくさん密集してるところがあるだろう。そこに行くといい。今はそうだな・・・4番倉庫にいると思うぞ」

何故に倉庫?と思った二人だが、とりあえず店長にお礼を言って、その倉庫に行ってみることにする二人。



倉庫を一軒家みたく建て替えているらしく、倉庫のシャッターの部分にはドアがついていた。

もうちょっと手を加えると普通の家として売り出せてもおかしくはなかった。


エルリック兄弟は4番倉庫を見つけ、ドアをノックした。


コンコン


「は〜い」

3分くらい立ってから、ドアが開け放たれ、さきほど見かけた黒髪の少年が出てきた。

「どうも、こんにちは」

「え〜と・・・宗教の勧誘はお断りしてるんですけど〜・・・」

あきらかに疑いの目でエルリック兄弟を見つめる少年。

「実は、オレ達、お宅の家に本が一杯置いてあるって聞いて訊ねてきたんだけど・・・よかったら本、見してくれないかな?」

「本・・・?」

「そう。あーと・・・ダメだったら別にいいんだけどさ」

少年はフルフルと身体を震わせ顔を伏せた。

「・・・ダメ・・・?かな、やっぱ・・・」

と、エドが言い終えると同時に少年がガバッと顔を上げた。その顔はすごく生き生きとしている。

その変貌っぷりに思わず後ずさるエド。

「いいよ!いいよ!!どうぞ、どうぞ!Welcomeだよ!本好きカモン!!」

少年はエドとアルを倉庫内へ入れていった。



エドとアルは倉庫内に入ってビックリした。

「な、何だコレ・・・!!」

倉庫内にはたくさんの本が山積み、または本棚にビッシリと詰まっていたのだ。

これはもう図書館といえるほどの蔵書量を持っていた。


「申し遅れたね。僕は。この本達の持ち主だ。って呼んで結構だよ」

ドアを閉めながら少年、は蔵書量に唖然としているエルリック兄弟に向けて、自己紹介をした。

その声に我に返った二人はに向き直り自己紹介をした。

「オレはエドワード・エルリック」

「ボクは弟のアルフォンス・エルリックです」

「え!?こちらが弟さん!?」

は視線をアルからエドへ。アルからエドへと繰り返した。

「はぁ・・・随分、大きな弟さんで・・・」

思わず、ペコリと頭を下げる。そして、は何かを思い出そうとしているのか頭を抱えた。

「エドワード・・・エルリックって言うと、もしかしてあの巷で噂されてる国家錬金術師の・・・“鋼の錬金術師”?」

ピタリと言い当てられ、動揺するエド。

「・・・軍属は嫌いってか・・・?」

「ううん。別に。本が好きな人は皆、兄弟って方針だから。何日でも居座ってくれちゃって平気だよ」

「て、ことは・・・」

「閲覧OK、宿も・・・?」

「うん。家に泊まってってよ。どうせ僕、一人暮らしだし」

「一人暮らしって・・・お前、一体いくつだ?」


土地の権利書などは16歳〜18歳までは親の印、または保護者が必要だからだ。

成人しているのならば保護者などは必要なくなるが・・・

の歳は15・6くらいに見えるし、背だってエドの全長と同じくらいなのだ。

とてもではないがは成人しているようには見えなかった。


「20歳だけど?」


「「うそ――――!!!??」」



こんな感じでエルリック兄弟はしばらくの間、宅に滞在することになった。




文献、古文書、錬金術書・・・大変、申し分ない量の本が集まった。

から聞かされた話しでは倉庫は10個あるらしく、そのすべてが本で埋め尽くされているのだそうだ。

では、寝るところやキッチンなどはどこにあるか?それらは倉庫の下に作られていた。


2日ほど経った日も、エドとアルはその地下で先ほどが兄弟のために6番倉庫で手に入れてきた本を読みふけっていた。


「ところで・・・なんでこんなに文献とかがあるんだ?錬金術師でもないのに」

読んでいた本から顔をあげ、すぐ側で2日前に衝動買いした本を読みふけっているに尋ねるエド。

「兄さん、気づいてなかったの?さん、構築式が書いてある腕輪を両手首につけてるんだよ」

「ほ〜う。アルは中々周りをよく見てるねー」

「え、じゃあって錬金術師だったのか」

「うん。一応」

は自分が錬金術師だということを認めた。

同じ錬金術師のエドにしてみたら、がどのくらいの技術を持っているのか知りたくて

何かを錬成してみろ、とねだったのだが、は錬成をしてはくれなかった。








そして、さらに4日が過ぎた。

今日もが倉庫から探し出してくれた書物を読みふけっていた。

ふ、と突然に疑問を持ったアルがエドに訊ねた。

「そういえばさんって何してる人なんだろうね?」

「そういえば、そうだな・・・」

思えば、いつも家にいるような気がする。

とはかなり打ち解けたが、自身についてはまだ知らないことが多いことに気づくエド。



バタバタバタバタバタっ!!



「ヤッタァ!!久々の仕事だぁ〜〜〜!!」


と、上機嫌でエドとアル達のいるリビングへとやってきた。

これはチャンスだ、と思ったエドがに聞く。

「そういえばさ、ってどういう仕事してる人なんだ?」

「ん?“非常勤臨時労働代行人”」

「「はい?」」

「簡単に言うと、人手が足りなくなった職場に赴いて仕事を手伝ったりする仕事をやってるんだ」

「何でも屋・・・みたいなものか?」

「まぁ、そうだね」

「で、それが仕事?」

アルがの手に持っている手紙を指差した。

「うん。そう。仕事の依頼」


そういうとは手に持っていた手紙を机の上に置いた。

その手紙の宛先を見た瞬間、エドの顔がさっと青くなった。

その宛先は 『東方司令部』 からだったのだ。


「やべぇ!!2週間前に大佐から頼まれた鉱山の調査・・・!あれの調査書出すの忘れてた!!」

「ああ!!そうだった!!もう、ダメじゃないか兄さん!急いで東方司令部に行かないと!」


慌てる二人にが声をかけた。

「あ、二人とも東方司令部に行くの?丁度よかった、僕もそっちに仕事しに行かなきゃならないから、一緒に行ってもいいかな?」

と言うはエルリック兄弟と行く気満々であった。



こうして、エルリック兄弟とは東方司令部を目指して汽車に乗ったのであった。









「おじさん、ここにある本、全部くださいっ!!」


エルリック兄弟がと出会いここまでの旅路のことを振り返っていたのをのこの一言で兄弟を現実へと引き戻した。


「待て待て!!!今そんなに本買ってどうすんだよ!!司令部着いてからでもいいだろ!!」

「えー・・・でもぉ〜」

「ほらほら、さん。約束の時間まであとちょっとなんだよ?」

「あぁ、そうか。お金がなかったら本が買えなくなっちゃうもんな・・・」

「そうですよ。ほら、さん行きましょうよ」


アルの巧みな話術での思考をどうにか他のことに移すことに成功する。




東方司令部まであともう少し。














+++あとがき+++

五萬打ありがとうございます〜

そして、やっぱし一話完結。でも、やっぱしお話しは続きます。

また、ハガレン夢っていうキリリクが来たときにはこれの続きでも書こうかと思います〜

近衛 美癒 様、キリリクどうもありがとうございました〜

こんなんでよろしかったでしょうか?