Escape 〜脱出〜
とうとう三日が過ぎてしまった。
三日目の日は勉強も何もかも忘れて、楓はミーシアの遊び相手になってあげた。
遊び疲れてぐっすり眠っているミーシアを見つめていると、何者かが部屋に入ってきた。
ミーシアの父、プラズリーだ。
プラズリーは数人の部下を従えさせ、楓の元へ来た。
楓は逃げる素振りを見せない。
そのことに満足したのかプラズリーは笑みを漏らす。
「一緒に来てくれるかな」
言外におとなしく着いて来ないと手荒なことをするぞ、と言っているようなものだ。
楓は、こくりと首を縦に振って歩き出した。
プラズリーは先導するように部屋の扉を開けて、楓を促す。
楓は黙ってプラズリーに従い部屋から出ると、後から出てきた部下の一人に薬を打ち込まれてしまった。
「っ・・・」
楓は前にも同じようなことがあったような既視感を覚えながら、ずるずると床に倒れこんだ。
「商品が揃ったところでオークションを始めようか」
プラズリーは謳うように伝える。
時刻はもうすぐで12時。
オークションは日付が変わった瞬間に行われるようだ。
プラズリーは部下に楓を会場につれていくように命令をくだすと、楓の体が浮いた。
筋肉を麻痺させる薬を打たれたせいで目も開けられなくなってしまった楓は聴覚と気配だけが頼りだった。
待合室にでもついたのだろう。扉を開く音と閉める音が聞こえた。
次に、何か柔らかい場所に降ろされ、ガサゴソと衣擦れの音と、肌寒い感覚がした。
着替えさせられているらしい。
着替えが終わると、人は出て行き部屋に人はいなくなった。
というか、狭い何かの箱みたいなものに閉じ込められているようだ。
しばらくすると、オークション独特の会場の盛り上がりの声が聞こえ始めた。
「それでは、皆様お待ちかねの今回の目玉商品です!」
プラズリーの高らかな声が響くと、楓が入っているであろう箱・・・いや、巨大な二枚貝がステージへと運び込まれた。
「そろそろ、時間だな・・・」
会場の目立たない場所からステージを見下ろす輪。
ここはペット禁止のようなのでショロトルはディスパイズでお留守番をしている。
貝の口が開き、中に黒いドレスを着た楓が姿を見せる。
とたんに会場がざわめき始めた。
「遠目からもお分かりでしょう、なんとも奇抜な美を持った品物です。これより美しいモノは他にはないでしょう。
そして、何より美しいのは瞳にあります。ある時は澄んだ空のような綺麗なスカイブルー
まなこ
そして、ある時は、血の如き紅い眼。この二つの色が見れるのは皆さん次第なのです」
しょうひん
楓についての説明が大方終わったあたりで、会場の扉が一気に開き、中に保安部が入り込んで来た。
保安部は中にいる人間を逃がさないように扉の前を囲むように陣形を取り、銃を構えた。
突然の来訪者に会場はパニックに陥ってしまう。
「どういうことだ!?」
「誰が通報した!!」
「手をあげろ!」
「私は無実よ!」
「ここいる全員を共犯者とみなし拘束しろ!」
「なんだ!?何が起こっている!!?」
ドンッ!
という爆発音がすると、再び客達は騒ぎ始めた。
あらかじめ、この会場に入る前にセットしておいた爆弾が起爆したのだ。
爆弾をセットしたのは、爆発時に起こる煙に身を隠すためだ。
輪はこの騒ぎと煙に乗じて素早くステージに向かった。
「おい楓、無事か?」
ステージの上にあがり楓が入っているだろう開き貝を覗いてみる。
「な…いない!?」
開き中の中にお目当ての人物はいなくもぬけの空だった。
保安部が騒ぎを起こし、プラズリーがとっとと逃げてしまったのを確認してから楓はこれを気に自分も脱走をした。
プラズリーが逃げ去った方向に向かって走り出す。
きっと、こういうことを想定しての向け道があるだろうと思ったからだ。
身体の痺れはまだ少し残っていたが、オークションが始まって20分くらいするとほぼ取れていた。
楓は走るのに邪魔なドレスの裾をちょこんと持ちながらプラズリーが辿ったであろう道を走る。
この格好はいささか目立ちすぎるので更衣室や衣装部屋かなにか…
とにかく着替えがありそうな場所を探しながら出口に向かう。
T路地にさしかかるとすぐ近くからプラズリーの叫び声が聞こえた。
「放せ!娘に…娘のところに行かせてくれ!」
楓は角からそっと顔を覗かせ様子を見る。
保安部3人がプラズリーを拘束している。
そのうちの一人が無線を取り出し仲間に連絡をとろうとしていた。
「こちらC班。Mのじゅうー…」
最後まで言い終わらずに連絡をとっていた保安部が床に倒れた。
この道は一方通行だ。
その上、通り道をこう塞がれて、しかもさらに応援を呼ばれては逃げることができなくなってしまう。
そう考えた楓は連絡をとろうとしていた男を蹴り倒したのだ。
バタンと音を立てて倒れた男とドレス姿の楓に気がついた残りの保安部がプラズリーを放して銃を抜き出した。
「なんだお前は!?」
そんなお決まりなセリフとともに銃を構えようと動く。
が、それよりも早く楓は蹴り倒した足を軸足に残った保安部のところに向き直る。
そしてすぐさま床を蹴りあげて飛び上がった。
その動きについていけない保安部は、飛び上がった体勢のまま身体にひねりを加え
遠心力がプラスされた飛び蹴りをくらい崩れおちた。
楓は着地と同時に保安部の足を薙ぎ払い、バランスを崩したところを保安部の腹部に勢いよく踵落としを決める。
わずか、30秒足らずの出来事だった。
「な、なぜお前が…!?まだ薬が効いて後5時間は動けないはず…」
楓はゆっくりとプラズリーの方に振り向いた。
「あなたを助けたわけじゃありません。応援を呼ばれたらボクが逃げられなくなるからです」
言葉ではそう言ったが、本心はそうではない。
保安部にここまでバレてしまったのなら捕まるのは時間の問題。
ならば、最後に一目だけでもミーシアに会っておいてほしい。
そう思ったからこその行動だった。
「…すまない」
その言葉の裏を感じ取ったのかプラズリーは父親の顔をして、楓に礼を言い足早にこの場を去った。
プラズリーが去って行くのを見届けていると突如後方から声がかかった。
「楓!?」
三日ぶりに聞く声にまさか…!という思いとともに振り向いた。
そこにはタキシードを着た輪がいた。
「輪!?」
楓のもとに来た輪は小さく息をつく。
楓は驚きの眼差しで輪を見つめた。
「輪…タキシード、あんまし似合ってないね」
「開け口一番がそれかい!!」
ビシッとツッコミを入れる輪。
久しぶりのやりとり。空気。
それにクスリと笑みを漏らす輪と楓。
「でも…どうして、輪がここいるの?」
「…普通はそれを先に聞くよなぁ……………お前を迎えに来たんだよ」
「嘘………」
まさか、自分の淡い期待が叶うと思っていなかった楓は、その期待が現実になったのに驚く。
そんな様子の楓を見た輪は真面目な顔をして楓に聞いた。
「…嫌、だったか?嫌ならいいんだ。俺は強制しない。これからはお前一人で行動するって言うんだったら…」
「そんな!そんなことないよ。ただ、驚いた、だけ…
っていうか、ほら、多分ボク急に居なくなったりしたから輪達心配したでしょ?本当にゴメン!
今度からは無断で居なくなったりしないから…って、でも、今回のように誘拐されたら無断も何もないよね
あぁー!!もう、何を言ってるんだろうボク…!」
輪の言葉を中断させてわたわたと慌ててまくしたてる楓。
自分の失言のせいで、輪に変な誤解をさせてしまったことをとくために何だか必死に弁解している。
そのうちに自分が何を言っているのかわからなくなってしまった楓は頭を抱えこんでしまった。
「と、とにかく!ボクは輪達と一緒に居たいんだ。一緒に真実を捜したいんだ」
一番言いたかった言葉をストレートに伝える楓。
「…過去の記憶がお前を苦しめてもか?そうまでして知りたいのか?」
「忘れたの?前にも言ったよね?ボクは知りたいんだ。自分の過去を。自分が、何をしてきたのかを。
例えそれが、心がはちきれそうな事実でも……受け入れなきゃいけないんだ。過去は変えられないから…」
あぁ、そうだった。
コイツは最初っから覚悟を決めて俺達とともに行動をしていたんだった。
自分達と一緒に行動をする前のことを思い出していた輪はそんなことを思った。
「過去がないとね、未来は造れないんだ。
未来を造りたいけれど、過去がないから何をしていいか、分からないんだ。
だから、ボクは未来が欲しい。だから、過去を知りたい」
楓は言葉をそこで区切ると輪の瞳に真っ直ぐ自分の瞳を合わせた。
「ボク達の利害が一致している限り、ボクが輪達から離れることなんて在り得ないよ」
全てを包み込むかのような微笑みを浮かべてそう言った。
その微笑を見た輪は、今まで考えてたことが馬鹿らしく思えてきた。
そう、アレは月桂の意志であって楓の意志ではない。
月桂は自分達と行動をともにし、記憶の紐が解かれていくことを快く思ってはいないようだが
自分達は楓の気持ちと決意を尊重しようと思う。
「そんじゃ、早くこっから脱出しようぜ!」
輪はそう言うと、楓の腕を取り、通路の外へと引っ張った。
輪に腕を引っ張られながら通路の外に出ると、そこはミンズシティ全体の駐車場になっていた。
今、量産を始めているエアカーやスカイバギー、エアバスなどの駐車場だ。
そこから一台のエアカーが地上へ出る車専用のエレベーターに乗って昇っていくのが見えた。
エレベーターは地上へ向かってどんどん昇っていく。
多分、あのエアカーに乗っているのはプラズリーなのだろう。
楓がプラズリーを見送っていると輪が声を上げて呼んだ。
「おい!コッチだ!」
「あ・・・うん」
楓は返事を返すとすぐに輪のもとへと向かった。
駐車場の一角には無造作に駐車されたエアカーが数台見受けられた。
輪はそのうちの一台に向かって歩き、懐から黒い蝶をかたどったものを取り出す。
「それは・・・?」
「一応、仕事だ。スザナから貰った昆虫型ロボットをこの保安部用のエアカーに取り付ければ完了っと」
ペタッとエアカーに描いてある保安部のマークである黒い蝶の上に貼り付ける。
驚くことに、この機械の大きさとマークの大きさが一致していた。
「そこの赤髪!何をしている!?」
昆虫型ロボットをエアカーに貼り付け終わったとたんにまるで狙ったかのように保安部がやってきた。
「やべっ!」
輪は条件反射で楓の腕をとり保安部から逃げ出した。
「待て!」
「こちら、8班。ターミナルにオークションに参加していたと思われる人物が二名逃走中」
保安部の一人が楓達を追い、もう一人が無線を使って仲間に連絡を取っている。
「なんで逃げたりしたのさ!逃げずに適当なこと言ってればこんなことにならなかったのに・・・!」
「わ、悪い。つい。てかお前、言うようになったな・・・」
そんなことを話しながら、輪は自分達が乗ってきたスカイバギー、ディスパイズへと向かう。
輪はディスパイズへ飛び乗ると楓に乗るように促した。
「早く乗れ!」
「う、うん」
楓はディスパイズの…運転手から見て左側の方に乗り込んだ。
『作戦終了だな』
運転手を挟んで右側にはショロトルが乗っていた。
このバイクは左右に人が乗れるような仕組みになっているのだ。
「ショロトルさん!」
久しぶりに会うショロトルに歓喜の声をあげる楓。
『久しぶりだな楓、元気にしてたか?』
「はい・・・まぁ・・・」
身体的には元気だったが、毎日着せ替え人形のようにドレスをとっかえひっかえされていたので
精神的にはあまり元気ではないような気がして楓は言葉を濁した。
「再会の挨拶はそこまでにして、ここを早く出るぜ!」
輪がディスパイズのエンジンをつける。
「ターゲットはスカイバギーでミンズシティを脱出する模様」
「急げ!」
「早く!我々もエアカーに乗って追うんだ!」
などと保安部達が数メートル先で叫んでいるのが見えた。
『なるほど・・・ぽかをしたわけだな』
「うっせぇ!」
「二人とも口喧嘩してる場合じゃないよ!とにかく早くここを出なきゃ・・・!」
「わーかってるっつうの!じゃあ、行くぜ!しっかり捕まってろよ!」
その輪の言葉と同時にディスパイズはエンジンを唸らせ、地下都市ミンズシティの地上と地下とを繋ぐ道路(トンネル)に出た。
そのまま、加速をつけて地上へ出ると同時にスカイモードへと展開させ、空を切って飛んだ。
「凄い!飛んでる…飛んでるよ!!」
初めてスカイバギーに乗った楓は初めての体験に凄い衝撃を受けていた。
「へへ。凄いだろ」
「うわーうわ〜」
『はしゃぎすぎて落ちるなよ』
楓は子供のようにはしゃぎ、下界を見下ろしたり、自分の座っている席などを見渡した。
すると、右側面の方にちょっとした収納スペースがあることに気づいた楓は、そこを開けてみた。
それは折りたたみ式のちょっとしたテーブルになっていた。
「何これ。キーボード?」
だがそれはテーブルではなく、キーボードだったのだ。
楓は少し戸惑いがちに、だが好奇心からだろう、迷わずにキーボードについている電源ボタンと思しきボタンを押す。
すると、キーボードの上にホノグラム型ディスプレイが出現した。
楓は好奇心のままに手を動かし始めた。
『まずいぞ輪!』
「あ?何が?」
『後ろから保安部のエアカーが追っかけてきている』
「何だって!?」
動物特有の五感の鋭さで保安部のエアカーが近づいていることをショロトルが輪に知らせた。
「そこのスカイバギー!今すぐエンジンを止めなさい!」
後ろのエアカーからスピーカー越しで制止を呼び止められた。
が、そんなの聞くはずもなく、さらに加速をつける輪。
「スピード出しすぎ!キップ切るぞ、そこのスカイバギー!」
なんてことも言われたが、無視を決め込み走らせる。
『くっ・・・追いつかれるぞ!』
やはり馬力が足りないのか、保安部のエアカーにだんだんと距離を縮められていく。
「くそっ!相手は何台いる!?」
『1・・・2・・・全部で5台だ』
「振り切れるか・・・?このままじゃ囲まれちまう」
「・・・なんとかなるかもしれないよ」
今まで黙ってキーボードをいじっていた楓が口を開いた。
「なんか策でもあるのか!?」
「なんか、このスカイバギーのエンジン出力の比率を変えると・・・」
『変えると・・・?』
ショロトルが楓の続きを促す。
「レーザービームになるみたいなんだ・・・」
「レ・・・・ってはぁ!!?スザナの野郎なんてものをスカイバギーにつけやがったんだ!!」
これでつかまったら国家反逆者として疑われるのが関の山だ。
輪達はますます、保安部から逃げ切らないといけなくなった。
「おっし!いっちょ一発ぶちかましてみるか!」
乗り物に武器を装着するということは、それすなわち兵器だ。
兵器を平然とした顔で作ってしまうスザナに呆れ驚いていたのかと楓は思っていたが、実際は違った。
輪はものすごくやる気満々だ。
「わかった」
兵器とか、そういう人を傷つけるものが嫌いな楓だったが
この状況を打破できるのはその兵器だと悲しくも理解していたので、決断に時間はかからなかった。
楓は返事をすると、すぐさま指をキーボードに這わせる。
画面がスカイバギーの全体図に移り変わる。
そこからエネルギーの比率がどんどん変わっていき
エンジンに使われるエネルギー率が60%まで落ちると準備完了という文字が出た。
それと同時に、スカイバギーの8つあるマフラーのうち一つが後ろから迫ってくる保安部のエアカーに狙いを定めるように動いた。
その光景を、まるで合体ロボみたいだなーと思って見ていた楓の耳に小型パソコンからピーという音が出た。
慌ててパソコンの方に向き直ると、画面は先ほどとは違う画面になっており
赤い点が5つコチラに向かっている様子が映し出されていた。
楓は赤い点が三つほど重なっている所をターゲットに選び、エンターキーを押した。
一番外端にあるマフラーからバチっと電流が迸り、それが止んだかと思った瞬間に
溜まったエネルギーを濃縮し吐き出すかのように一条の光が迸った。
それは一瞬の出来事だったので、保安部のエアカーはレーザービームを避ける暇などなかった。
その結果、見事に三台のエアカーは機体に以上を示し、みるみる失速して地面へと落ちていった。
残りの二台にもロックをかけレーザービームを放つ。
この二射目で楓達の目の前…いや、この場合目の後ろというべきか…には何もなくなった。
「やったぜ!」
残りの保安部のエアカーを打ち落とし、喜ぶ輪。
だが、ディスパイズの調子が悪いことに気がついた輪がエネルギーメーターを見てみると…
エネルギー残量が既に30%を切っていて、スカイモードを維持できなくなっていた。
「なっ…!エネルギー残量がもうなくなってる!!?」
「きっとレーザービームを打ったせいだよ」
『このままだと地面に墜落するぞ!』
グラリと機体が傾く。
「お、おち…落ちる!!!」
パスン、パスンとマフラーからだんだんと排気ガスが少なくなっていき、エンジンの音も聞こえなくなってきた。
そうなると、引力と重力にしたがって地面へと落ちていくしかなくなる。
ヒューと今までとは違う風を感じながら落ちていく。
これから自分達の身に起きるであろう衝撃を想像し、声をあげる二人と一匹。
あぁ、思えば短い人生だったなぁ。
なんて三者三様にあまり代わり映えのしないことを考えていたが、楓だけは違かった。
―… この感じ、前にもどこかで…
楓は高いところから落ちていく感覚に既視感を覚えていた。
しばし、自分の思考に思いふける楓。
そして気づく。
夢の中で見た、橋の上から落ちていく光景と今、実際に体験しているこの感覚が酷似していることを。
気づいてしまうと塞き止められた水が溢れてくるかのようにどんどん思い出していく。
―… 何もできなかった。何も守れなかった。知らなければよかった。知って、何ができた?
何一つできなかったじゃないか。…なら、全てをリセットすればいい
何も知らない真っ白な自分に
今までは映像や、言葉なんかが脳裏を掠めただけだったのに、今回はその時の感情まで流れてきた。
まるで、他の人の感情が流れてきているみたいだった。
―… これ以上は踏み込むな
どこからか声が聞こえてきたと同時に楓の意識は闇に呑まれた。
「こんなことで死ぬんだったら、あの時ステーキ10枚食って逃げておくべきだった…」
『食い逃げか!?おい、走馬灯見る暇があったら
この状況をいかに回避するかの案を考えてみたらどうなんだ!!』
「そんなんできたらとっくにやってるっつーの!」
楓が既視感を覚えてる最中、こんなことを言い争っていた輪とショロトルは
楓の様子がおかしいことにようやく気がついた。
なんだか、体感温度低い。
そう思い、楓の方へ顔を向けると、深紅の瞳と目が合った。
「ゲっ…」
『桂!?』
輪が嫌そうに顔をしかめて言った言葉に続いてショロトルが残りの言葉を言う。
すると、ディスパイズに何か硬いものがあたり、跳ねた。
ガウン、ガウンと飛んで跳ねてを何回も続ける。
まるで、階段を駆け下りているみたいな感覚だ。
ディスパイズの車輪部分に当たっていたものは大気中の水蒸気が固まった氷の塊だった。
氷もまた重力にしたがって落ちていく。
その落ちていった氷の上にディスパイズが丁度のっかって跳ねていたのだ。
この氷は偶然できたものではない。
これは、月桂が能力を使って造っているものだ。
ここまで正確に能力を制御できるとは…と輪は無言で月桂を見ていたが
次の衝撃がきたので、振り落とされないようにディスパイズにしがみついた。
そうやって、跳ねて飛んでを繰り返しているうちに大きな湖の上までやってきてしまった。
湖の上までくると、もう氷の塊も出現することはなく、ディスパイズはそのまま湖へドボンと落ちた。
+++あとがき+++
久々に小説というものを書きましたねー
何ヶ月書いていなかったんだろうか…
会社行っても、やることすぐ終わっちゃって暇なんですよねー
その暇な時間を見繕って、こうしてワールド(オリジ小説)の方を
書き進めて溜めていたんですけどねー
この続きが書いてあったやつ、メール(添付してたのさ)と一緒に捨ててしまったよママン!(泣)
また、書き直しですか。そうですか…
次回からは新キャラ登場します。放浪整備士さんです。