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A
wakening
~覚醒~
夜のソロンニエの都を走り抜ける影が3つ。
楓は輪とショロトルのスピードに劣らない速さで一人と一匹についていく。輪から貰った黒い服をなびかせて。
着いた先は昼に来たばっかりのシルバーシュガーだ。
この店には裏口というものが無いので、正面から入ることにする。
輪は慣れた手つきで鍵を外し、店内へと入っていった。
「・・・手馴れてるね」
「まぁな。こんぐらいできないと食ってけないし」
「ま、まさか泥棒とかしてるの!?」
『いや、普段は何でも屋みたいなのをネットで開いて仕事を調達している』
「その仕事関係上、こういうことも出来ないとダメなわけ」
仕事でも、泥棒まがいのことをしているのではさっきのフォローは余り意味がないような・・・
と、心の中で思った楓だった。
『この店は上の階はないから、人が住むとしたら地下だな』
「よし!地下へ続きそうなモンを探すか」
「ねぇ、カウンターの奥に扉があるよ」
楓がいち早く、地下へ続きそうなモノを見つけた。
先ほども述べたようにこの店には裏口というものはない。
なら、必然的に地下へ続く通路と考えて間違いないだろう。
「開けるよ」
そう言って楓は扉のドアノブを引いて扉を開けた。
後から輪とショロトルもついてくる。
それを確認して楓は中に入って行った。
******
楓達がシルバーシュガーに侵入したものをモニターで見つめていた舞夜。
なので、もろバレである。
舞夜はモニターを見つめて溜息をついた。
すると、聞きなれた声が舞夜の背後で聞こえた。
「あ、この人達、昼頃来てたお客さんじゃないですか。
こんな時間に何しに来たんでしょうね。もしかして、忘れ物を取りに来たとかですかね?」
なんとも間の抜けた言葉に舞夜はまたも溜息をつく。
舞夜に話しかけた人物は黒髪にネイビーブルーの瞳の眼鏡をかけた青年だった。
この青年はシルバーシュガーのケーキを作っている人物だ。
名を 緑韻 夏樹 という。
「違うわよ。黒蝶にでも雇われたか、お金目当てで来た泥棒かもしれないじゃない。
どっちにしろ、私達にとっては敵でしかないわ」
「では、防犯機能を作動させますね」
「夏樹・・・あなた、楽しそうね」
夏樹の声音に含まれる感情に気づいた舞夜が夏樹に言った。
「あ、わかります?実はですね。ガトリングと別に最近、ビーム式のも取り入れてみたんですよ」
「ビーム!?ビームってあれのこと!?」
「そうです。目からビームが出るやつですよ。やっぱり目からビームは男のロマンなので」
「かっこいいわよね!目からビーム!よくやったわ夏樹!あなた、ロマンをわかってるわ!!」
先ほどまでの辛気臭い空気はどこへやら。
二人はビームのことで話を盛り上げていき、しまいにはロマンについても論議し合うしまつであった。
******
「どーなってんだよ。コレ・・・」
『やはりな。人生、そうそう上手くいくことなんて有りえんということだ』
アンドロイド
「人型機械兵器・・・・・・!?」
扉を開き、奥へ進むと転送装置があった。
罠かもしれないとわかっていたが、他に道がないので転送装置に乗り
この、アンドロイドがわんさかいる通路へと飛ばされてきたのだ。
楓達はアンドロイドに四方八方を塞がれているので逃げることもままならない。
アンドロイドは顔の部分にあるセンサーで楓達の姿形を捉え、敵と認識する。
『来るぞ!』
ショロトルの掛け声とともにアンドロイドが一斉に腕に仕込んでいるガトリングを打ち出した。
楓は咄嗟に宙へジャンプする。
そのまま空中で銃を抜き、一体のアンドロイドの関節部分を狙って銃を撃った。
そのアンドロイドは膝を折り、床に崩れた。
楓は倒したアンドロイドの側に着地し、そのアンドロイドを盾にするかのように隠れる。
隠れる前までは、楓の姿を追ってガトリングをぶっ放していたのに
楓が物陰に隠れた途端に攻撃を止めた。
「あ、危なく蜂の巣にされるとこだった・・・」
と、一息つく楓だったが、楓は咄嗟に動いた自分の身体に驚きを隠せないでいた。
考える前に身体が動いていたのだ。
『楓、無事か?』
牙でアンドロイドの腕を食い千切り、もぎ取っていたショロトルが楓が身を隠している所へとやって来た。
「はい。ボクはなんとか・・・それより輪は?」
『輪なら大丈夫だ。アイツなら着実にあの機械兵器を倒していっている』
「え・・・」
楓はショロトルの言っていることを確かめようと物陰から顔を少し覗いてみる。
すると、輪が次々とアンドロイドをどこから取り出したのかわからない
槍みたいな薙刀みたいな武器でぶった切っていく姿が見えた。
そして、よーく見てみると、輪の瞳がいつもの燃えるような赤ではなくて太陽のような黄金色になっていたのだ。
「輪の瞳が黄金になってる・・・・・・!?」
『今の輪は覚醒状態だ』
「覚醒・・・?」
『そうだ。輪が能力を発動する際に何故か瞳が黄金色になるんだ』
「ショロトルさん、能力って・・・」
『輪の能力は自らの熱で物質をなんでも熔かし、鍛え上げることができる。
つまり輪は熱を自在に操ることができる能力を持っているんだ』
「熱を・・・すごい・・・・・・」
ショロトルと楓が喋っている間にも輪は薙刀をふるい次々にアンドロイドを倒していく。
刃物では鉄を切るのも限界があるから正確には熔かしながら切り捨てている、のほうが正しいだろう。
輪がものの数分で三分の一くらいのアンドロイドを片付けていく。
楓も輪に加勢しようと銃を構え、物陰からアンドロイドの関節部分に照準を合わせ引き金を引こうとした
その時、楓の目の前の壁がいきなり爆発した。
楓はいきなりの出来事に目をパチクリしている。
爆煙から出てきたのは小柄な男とスーツを着こなした男。
「ありゃーすごいなぁ。この瓦礫の山」
突然、現れた人物…聖夜と亜澄麻の姿を見、楓は驚愕する。
それは、あのエンゲツの森で楓の記憶を奪った連中だったからだ。
新たな侵入者に気づいたアンドロイドがガトリングを二人に放つ。
聖夜と亜澄麻は左右に別れて攻撃をかわした。
聖夜はアンドロイドの脇を縫うように通り過ぎる。
聖夜が通り過ぎるとアンドロイドが次々と倒れていった。
「悪いね。俺、手癖が悪いんだよね」
誰にともなく言うと聖夜の手から何かの部品がポロポロと床に落ちていった。
恐らく、アンドロイドの大事な部品か何かなのだろう。
その華麗な手さばきでアンドロイドを倒していった聖夜を瞬きもしないで見ていた楓は彼と目があった。
目が合ってしまった楓は急いで盾としているアンドロイドへと顔をひっこめた。
『どうした、楓?あいつらと知り合いなのか?』
「知り合いっていうか…あの人達、ボクの記憶を盗った黒蝶なんです」
『何ぃ!!?』
「お前、野犬に食われて死んだんじゃ…!?てか、記憶が戻ってる!?」
楓の告白に驚くショロトルと、黒蝶が現れたことに動揺していた楓の上に
今しがた話していた人物の陰が落とされた。
恐る恐る顔を上げるとやはりそこには噂していた人物がアンドロイドの上に乗っかっていた。
「おい亜澄麻!月桂が生きてるんだけど、どうしたらいい?」
「何!?」
「どうすんだよ」
「俺の判断ミスだ。今度こそ確実に記憶を盗れ」
「あいよ」
話し合いが終わり、聖夜が楓に手を伸ばす。
楓にはすべてがスローモーションに見えた。
が、その均衡を破ったのは意外にも亜澄麻の切羽詰った声だった。
「聖夜、避けろ!」
「は?」
それを合図にしたかのように一筋のビームが聖夜が元居た場所を通り過ぎた。
亜澄麻の掛け声があと一秒でも遅かったら、自分はあのビームに貫かれていただろう、と思うとゾッとした。
聖夜はすぐに安全地帯である場所…つまりは楓とショロトルが隠れている場所へと降りてビームの回避を試みた。
突然、ビームが頭の上を過ぎったと思うと聖夜が楓達のもとに下りてきたりと
楓は目の前で起こっている事態の目まぐるしい変化に目を白黒している。
『新手のアンドロイドみたいだな』
「あぁ。ありゃあ新型タイプのアンドロイドだ」
「って、君、敵じゃないの!?」
「お互いの生死がかかってるときに敵も何もないだろ。
とりあえず、邪魔なあのアンドロイドを倒してからお前の記憶をもう一回盗ることにする」
それまで、一時休戦。
と目の前の小柄な彼は言ったのだった。
楓は目の前にいる彼がわからなくなった。
自分の敵なのか、敵じゃないのか―…
それに、何だかとても懐かしい感じがする―…
楓が意識を違う方へ寄せている間もアンドロイドは侵入者を発見しビームを放つ。
この新型のアンドロイドはガトリング式のセンサーとは違い
熱センサーを使っているのでどこへ隠れてもすぐに見つけだしてしまうという、すぐれものだ。
盾にしていたアンドロイドのボディを貫通し、壁に穴が空く。
ここにいてはそのうちビームが当たってしまうと判断した二人と一匹は隠れていた場所から躍り出た。
「クソッ!亜澄麻は何やってんだよ!!」
聖夜が舌打ちし、亜澄麻の方へと見やると亜澄麻は他のビーム式アンドロイドを葬っている最中だった。
「聖夜、このポンコツは俺にまかせて、再度、月桂の記憶を盗ることに専念しろ!」
「わかった」
アンドロイドは亜澄麻に任せて、聖夜は再び楓と向き合う。
「それじゃ、いきますかね」
「えっ!?」
今さっき一時休戦と言ったのにもう敵に戻ってしまった聖夜に戸惑う楓。
『楓っ!!』
楓の危機にショロトルが駆け寄ろうとするが、それを引き止めるようにビームが乱射する。
『チッ…!!』
思わず舌打ちをし、ショロトルは邪魔なアンドロイドを片付けようと牙を向けた。
輪のところにもビーム式のアンドロイドが何体か転送されてきて楓を助けに行きたかったがそれどころではなかった。
聖夜は楓の方に駆けて行く。
記憶を確実に盗るには少なくとも30秒は必要だ。
そのためには楓にはおとなしくしてもらうしかない。
聖夜は懇親の一撃を楓に喰らわせようと身体をひねり、その勢いをのせた蹴りを喰らわす。
しかし、楓はその攻撃を間一髪で身体を後ろに反らして避けた。
そのまま床に倒れるようにし、床に手をつき、足を宙に浮かせ ―バック転の要領で― 宙に浮かせた
脚で聖夜の繰り出した脚を挟み、聖夜を床へ叩きつける。
が、その楓の攻撃をかろうじて腕で食い止め、勢いをつけて起き上がる。
まさか、反撃を食らうとは思ってなかった聖夜は思わぬ出来事に動揺していた。
「記憶がないけど、身体は覚えてるってか…」
聖夜は口の端を引きつらせながら楓の方を見た。
「・・・!」
聖夜は楓の瞳を見て驚愕した。
一方、輪やショロトル、亜澄麻はというと、全てのアンドロイドを倒し終わっていた。
ショロトルと亜澄麻の方からは楓の顔は見えない。
だが、明らかに聖夜の様子がおかしかった。
輪はかつてアンドロイドだった瓦礫の山のてっぺんに荒い息をしながら座り込んでいた。
「ハァハァハァハァ・・・チィッ!これだけの数を相手に能力、使い続けて戦うってーのはちょっとばかしきつかったな…」
顔には疲労の色が見える。
「楓は・・・」
輪は楓とショロトルがいるであろう場所を振り向いた。
「マジ・・・かよ・・・・・・・・」
輪の場所からは楓の顔が窺えられる。
そのため、輪は楓のその瞳の色にただ、ただ驚いているだけだった・・・
「・・・・・・・どうした、それでもうお終いか?」
今までの楓からは考えられないくらいの冷たい声が響いた。
聖夜が楓の記憶を盗ろうと頭を狙った手は楓の手に受け止められていた。
「紅い瞳・・・」
聖夜は声を搾り出すように呟いた。
そう、聖夜が言うように楓の瞳は血のように紅く染まっていた。
ヒュッと、風のうなる音が聞こえたかと思うと聖夜は輪がいる場所の近くまで飛ばされていた。
楓が聖夜の腹に蹴りを入れたのだ。
「おい、大丈夫か!?」
思わず敵に声をかけてしまう輪だった。
「なん・・・・とか・・・」
聖夜は腹を押さえながらその場に座りこんだ。
「覚醒・・・してしまったのか・・・!」
いつも物落ち着いた声で話す亜澄麻が焦りの色を含んだ声で言った。
楓がちらりと後方を見てから、壁を背にするように立った。
『紅い瞳に、銀の髪・・・・・・楓が“紅の月桂”だったのか!』
「オレと同じ体質・・・・・・・・」
瓦礫の山の上で輪がショロトルに続いて言った。
「どうした、来ないのか?」
月桂と化した楓が誰とでもなく問いかける。
その場の全員に問いかけたというべきだろう。
「・・・・・・こうなったらコチラに部が悪い。引くぞ、聖夜」
「・・・わかった」
亜澄麻の方は元来たところへと姿を消し
聖夜の方は小型手榴弾を取り出し輪が座っている近くの天井に向けて投げ飛ばした。
「んなぁ!!」
近くで爆発が起こった輪はたまらなかっただろう。
「俺らはこれで失礼するからアイツなんとかしてくれよぉ!」
聖夜はまだ爆発に起きた煙が止む前に瓦礫の山を軽くジャンプをしながら
天井に開けた穴から脱出していった。
「二人は逃げたか・・・お前らも逃げるのか?オレと戦わずに」
月桂は輪達をあざけるように笑った。
「あいつら・・・問題をおしつけて行っちまった・・・・」
輪が少々、もういない聖夜達に怒りながら言った。
『どうする、輪。やるのか』
「やらなきゃ、やられるだろ」
輪は瓦礫の山を軽やかに降りた。
ショロトルと輪の様子を見ていた月桂は嬉しそうに口元に笑みを作った。
「フッ・・・少しは楽しめそうか・・・・・・」
月桂がその言葉を言い終わると同時に輪は走ろうとしたが
ちょうどその時に通機構から煙幕が飛び出して、煙を撒き散らし輪達の視界を遮る。
その煙幕に乗じて、転送装置で現れた黒髪の青年、夏樹が現れ月桂の首筋に注射器を差し込んだ。
「こんばんわ。ようこそ銀影、ソロンニエの都支部へ」
煙幕が引き、輪達の目の前に姿を見せた夏樹は楓を抱え上げながら優雅な仕草で言った。
+++あとがき+++
はい、やっと覚醒編の書き直しが終わりました。
これ書いてるとき、雷が鳴ってて2回も電源が落ちてしまって大変でした…
今回、書き直したところは戦闘シーンですかね。
アンドロイドとの戦闘とかをもっと細かく書いてみたつもりなんですけど、どうでしょうかね?
やっぱり、戦闘シーンは難しいなぁ…
もっと戦闘とか絵でも文でも上手く書けるようになりたいな~
書き直したら更に長くなってしまいましたネ・・・<ぎゃふん